第60話 仲良くしたら最期の理由 2 ページ25
「水樹君?」
楓が心配そうに俺の顔を見る。
「どうしたの?具合悪い?」
「…そんなんじゃねぇよ。」
「そ、そう…?」
「……日向が行くなら、俺も行く。」
話を強制的に戻す。
「……水樹君って、本当に日向君が好きなんだね。」
「いや…お前らも、似たようなもんだろ。」
「そうかな?」
「あぁ。…まぁ、俺らみたいなマイペースな感じじゃなくて…兄弟とか親友って言うより夫婦って感じだけど。」
「あははっ、夫婦って……まぁ、長年一緒に過ごした家族だしね。でもそれは君達もでしょ?」
「……まぁな。」
こうして楓が本気かどうかは分からない笑みを浮かべているけれど、楓は…いや、楓と柊は知らない。
俺は…俺と日向には…空木邸とは別件で、楓と柊にある「重大な秘密」を抱えている。
重大というよりも、俺達にとっては「重罪」だ。
一瞬でも日向が記憶を取り戻したせいで、あんな事が…
だから仮に空木邸の事件の黒幕が国分寺刹那だと楓が知ったとしても、それとは別に楓と…そして柊には俺達を憎む理由があるのだ。
忘れもしない、あの日の出来事を。
…あぁ、思い出すだけで吐き気がしてきた。
「頼むから、これ以上日向とは……」
「え?」
楓が聞き返してきた。
俺は振り絞る様に言う。
「いや…その…今後もお前らが日向と同行するんだったら、俺も一緒についていきたい…いや、付いていくから。」
「えっと、うん…それは全然構わない…よ?」
俺から言えるのは、それだけだった。
出来る事なら、これ以上日向と関わらないで欲しい。
だけど、そんな不自然な真似をしたら怪しまれるし。
それに、日向を「止められる」のは俺だけなんだ。
2人の前で…何かの拍子で、日向の記憶が蘇るなんて事はあってはならないんだ。
じゃないと……
【日向!?お前何してるんだよ!?何でこんな事を…!!】
【………】
【ひ、なた?】
【……ざまぁみろ。】
あの時の日向の顔を、俺は忘れる事は出来ない。
実を言うと、俺だってほんのちょっと前までは日向の記憶を「取り戻す側」だった。
でも、もうそれは出来ない。
あの日を境に、それはしてはいけないと気付いたから。
けどあの2人は、日向にとって「記憶を取り戻す」鍵には十分過ぎる。
今まで何も起こらなかった方が奇跡と思える程。
だから…記憶を取り戻したその時。
2人はどんな形であれ、嫌でも「日向の秘密」を知る羽目になるだろう。
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作者名:tsurara | 作成日時:2017年3月5日 20時