第435話 背負うべき罪は ２ ページ10
「目の前でそういう事されるの本当腹立つ！何でお前らそんな勝手な事出来る訳!?まだ話は終わってないだろ!?自分が苦しいからって相手の目の前で有無言わさずサヨナラって…そういうの生理的に嫌なんだけど！」
「生理的なんだ…」
「だから！要は……その……」
水樹が頭をポリポリ掻いて考え込む様な表情になる。
「…本当にさ、勝手に死ぬのだけはやめて欲しい。お前らが望んでなくても、相手は望んでいないんだよ。」
「………水樹…」
「それに、死ぬ事が償いになるなら……その…所謂悪い事をする償いが死ぬ事なら、世の中の連中は…俺も含めて、皆死ななきゃいけない事になるんだよ。
悪い事しない人間なんていない。大事なのは、悪い事を悪いと思って悔いる事…それだけでいいと思う」
「……じゃあ、どうすれば良かったんだよ……っ！」
頬に伝う涙が、止まらない。
泣きたいのは、俺じゃなくて皆なのに。
「どうすれば救えたんだよ……どうすれば償えるんだよ……！
俺は、殺した人達を生き返らせる事は出来ない!!…だって、俺が皆を……」
「―――違う」
水樹は、はっきりと言った。
「それは、お前の中の「子供の声」だろ？
お前が無意識にその声に従ったせいだ。…お前じゃない。」
「だけど……従わなければ……俺が、弱いせいで……」
「それ程、お前は罪悪感に押し潰されそうになったんだよ。
罪悪感のせいで、弱ったお前は「子供の声」に乗っ取られそうになった。
お前は、こんな事したくなかったんだろ？」
「……でも、杏と竹貫先生を殺したのは紛れもなく俺で…」
そうだ。
それは、俺の意思でやったんだ。
俺の言葉のせいで
俺が疑わずに飲ませたせいで
俺は、確実にこの2人を………
「竹貫先生を殺そうとしたのは、僕もだよ」
「………楓、君…？」
「…僕は、これまでに何人もの命を奪った。
竹貫先生に毒を飲ませ、殺そうとしたのは紛れもなく僕の意思だよ。
それは日向君じゃない…僕の罪だ。
……杏ちゃんの件に関しても、君のせいじゃない。
それは、椿部長の罪だよ。」
「それに、竹貫が自分で死んだのは、竹貫自身が楓に対する罪悪感を抱いたからこそだと思う。
部長さんだって…あの人が最期に毒を飲んだのは杏や妹に償うつもりでやったんだろうな…」
「何もしなくても、あの2人は死んでいた…
――その罪は、僕や椿部長が背負わなければいけない……君が背負う罪じゃないんだ。」
真っ直ぐ、俺を見ながら言った。
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年8月8日 21時
