第434話 背負うべき罪は １ ページ9
目の前に、水樹の顔。
その顔は…無表情の中にも、微かな怒りが見えている。
「……離してよ」
「離さない」
「…離せ」
「離さないっつってんだろ」
「…何で？」
「とにかく、話はそれどっかに放り投げるなりなんなりしてからだ」
「――――何なんだよ、お前はッッ……！」
俺は掴まれた腕を振り回す。
お互いに取っ組み合いになる。
「お前、分かってんの!?俺がどんだけ酷い事したのか理解してんの!?
俺は…俺は、家族や仲間を殺した殺人鬼なんだぞ!?」
「…だから、何？今こうして罪の意識をっ…感じているなら、それがお前の本心だろ……!?」
「違う！俺は簡単に人を殺せる人間で、取り返しのつかない事をして…！」
「…落ち着け!!まだ話は終わってねぇんだよ!!……俺は、お前を死なせたくない!!」
「死なせろよ!!もう俺は、色んな人達の血で汚れてるんだよ……！
どうして俺が生きてるんだよ!!どうして皆が死ななきゃいけないんだよ!!
俺が罪と向き合わないせいで、こんな事になったのに!!
そうすれば、水樹も楓君も、こんな身体にならずに済んだのに!!」
「あぁクソッ、何でお前はいつもいつもそうやって自分を――――」
――――ドスッ
「………え？」
俺が持っていた果物ナイフに
嫌な、感覚が体に流れた。
………水樹のお腹に、目をやると……
………深々と、ナイフはお腹に刺さっていた。
「――――あ……」
「水樹君!?」
「水樹…！」
……水樹は呆然としてそれを見下ろした後……
ぐっ、とナイフの柄を握りしめ……
一気に、引き抜いた――――
「水樹!?お前、何して―――」
「何してんだ、はこっちのセリフだ!!このアホンダラ!!!!」
「ぐお!?」
ゴッ、と俺の頭に拳骨が走る。
初日に、俺がバスの中でデリカシーのない事を言って桜にやられた時を思い出す。
い、痛い……!!
「お前本当にいい加減にしてくんない!?そういう事されるの本当ムカツクんだけど！」
「ちょ、水樹君…!?」
「誰がそんな事言った!?誰がお前は死んで良いって言った!?誰が全部お前のせいだって言った!?つーかそれ柊にも言えるからな!?」
「え!?」ﾋﾞｸｯ
「お前ら2人共揃いも揃って自分のせいにしてるけど、それで世の中の善人がどれだけ心病んだのか分かってんの!?お前らみたいな奴らはな、社会で悪人に所謂サンドバックにされるタイプだぞ!?」
「……あの、水樹君…それちょっと、ズレてる気がするんだけど……」
楓君が目を丸くして呟いた。
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年8月8日 21時
