第433話 俺が悪い ３ ページ8
あの日は毎日が楽しくて
好きな事して過ごすのが当たり前で
それはずっと続くんだと思っていて
なのに……
そんな世の中を甘く見ていた子供の俺の軽率な行動が
純真無垢で元気をくれるあの子を、死なせた。
あの子を……紅葉を死なせた事で、様々な不幸が訪れた。
「…ミス研の皆も…柳先輩も刹那さんも…俺のせいで死んじゃったんだよ……
罪から逃げ続けた最低最悪の人間……まるで、今の俺は疫病神みたいだ…」
もしかしたら、生まれた時から疫病神だったのかもしれない。
「俺が、皆に出会わなければ良かったんだ……」
俺が生きたせいで、皆の人生を奪ってしまった。
「そうすれば、楓君の家族は皆生きてて……柊君は空木の人達に救われて……」
俺なんか、いなければ良かった。
「…きっと、桜はあの薬を飲んで…元気になって………」
俺の命は、大勢の人達の犠牲で出来ている。
「お父さんも生きてて…杏も…水樹も………」
頭が痛い
「竹貫先生と菫は、幸せに……なって……」
目が霞む
「…椿部長も、西崎先生も、生きて……て………」
視界が
「俺…が……」
(―――お前なんか、いらない)
子供の声
(思い出さなければ良かったのに)
脳に響く怖い声
(そうすれば、俺とお前は……俺は、楓を守れたのに)
楓君を…守れた…？
(あんな屑共から、楓を守れないお前なんかいらない…)
………誰………また、あの声が………
(死んでしまえ、役立たず)
…………あぁ、そうだ……俺は………
(紅葉に、皆に償いたいなら…)
落とした果物ナイフを拾う。
(お前が、これ以上誰も死なせたくないって思うなら…)
そうだ…
記憶も、罪も、そしてそこから生まれた罪悪感を、思い出したのなら
(――――お前が、消えろ……!!)
俺の命で、終わらせよう。
もう、これで
誰も死なない。
刃先を喉元に向ける。
(…それで、苦しんで死ね……)
うん、分かった…今すぐ死のう…
そうすれば、お前が守りたい楓君を守れるんだよね……？
俺は、もう罪を重ねなくて良いんだよね……？
(それで喉元を、あの子と同じ痛みを味わって、苦しんで死ね…！)
ひんやりとした刃先が、喉に伝わり―――――
刃先が喉から離れる。
誰かが俺の手首を掴んで、喉から遠ざけた。
誰かが……
「…水樹……」
「…ホンット、お前自分責める癖いい加減やめろや」
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年8月8日 21時
