True END １２ ページ35
一度捨ててしまった10年前の記憶と共に、俺は生きている。
君が目の前で死んだあの光景は、これから先も忘れる事はない。
忘れてはいけない。
君が俺に生きて欲しいという気持ちを、もう無かった事にはしない。
確かに記憶を捨ててから色んなものを手に入れたし、色んなものを失った。
…悲しい記憶に蓋を閉じて、無かった事にしていた。
でも、それじゃダメだよね。
君と出会えた時の楽しかった記憶まで忘れちゃダメだよね。
紅葉がいてくれたから、楓君と柊君に出会えたのに…
きっと、それ程俺の中では君の存在がとても大きくて、それまでの人生の大半が君だった。
この先も、嫌な思いはするし、嫌な人達に出会うし、忘れてしまいたい事だって一杯ある。
高校2年生の俺達は立派な子供だったら尚更精神的な面で辛い思いをするだろう。
けど、夢で語り掛けた君の言葉を、俺は夢かもしれないという理由で無かった事にはしない。
今度は、君と交わした約束を胸に、生き続ける。
『楓達とこれからも友達でいて欲しいんだ。もちろん、日向が大好きな人達と。
それでね、もしまた会う事が出来たら、一杯お話聞かせてね！
最後に…これからも、ずっと親友でいて欲しいんだ。
僕、日向達と出会った事、日向達といれなくても、絶対に忘れないから―――』
紅葉、俺も君の事を忘れない。
君がいたという記憶を、もう忘れたりなんかしない。
今はまだ自分のした事に向き合うのに精一杯だけど、辛くても悲しくても、無かった事にしない。
楽しい想い出や、幸せな想い出ばかりが、俺の人生じゃない。俺の記憶じゃない。
皆、泣いたり怒ったり、悲しくなって…挫折だってするだろう。
誰だって間違いは犯すし、出来ない事にもがいたりする。
傷付いて傷付けられる事だってある。
それは人によりけりではあるが、皆が抱えている事だ。
だから、俺はもう「俺だけが」とか「俺さえ」とか、徐々にではあるが1人で解決しない様に頑張ろう。
どうしても行き詰まったら、誰かに相談しよう。そして、信頼出来る人達がいるなら、その人達を大切にしよう。
……俺はもう逃げない。
俺は、あの日の出来事も含めて、俺の中の記憶で君を生かし続ける。
悲しい事があっても、忘れない。
君が助けてくれたこの命は、今日も栗栖野日向を生かしてくれる。
君が俺に生きて欲しいという想いを、俺は決して無駄にはしない。
いつか、君との約束が果たせるその日まで、俺は懸命に生き続けるから――――
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：tsurara | 作成日時：2018年8月8日 21時
