True END ６ ページ29
……今度は、桜と杏……
俺達の姉と妹の病室だ。
……正直、気まずかった。
椿部長のせいとは言え、杏は間接的に俺が感染させた事には変わりないから…
杏は「日向お兄ちゃんのせいじゃない」と言うけれど、俺の中ではそう簡単に割り切れる問題じゃない。
ちなみに杏は椿部長と数日前に話は出来た様で、お互いに謝罪は出来たらしい。
しかし、殺そうとした事と傷付けた事の溝はとても深く、それ以降話は出来ていないらしい。
そして桜は……
……俺と桜は、目を合わせる事が出来なかった。
水樹の話によると、桜は10年前の件と花の毒について楓と水樹に謝る事は出来たものの、椿部長とは病院内では一度も顔を合わせていないのである。
「今、椿部長の顔を見たら食って掛かるかもしれない。」
それが桜の言い分だった。
可愛い妹の杏を計画的に殺そうとした椿部長を、桜は許せないのだ。
そんな事言ったら、提案しただけでなく毒入りのジュースを注いだ俺の事も許せないと思うけれど…
「……あ、そうだ！お母さんにも連絡しないと、ね。
日向お兄ちゃん起きたって……」
杏が作り笑みを浮かべて提案する。
「あ、俺が行くわ。杏も一緒に来て」
「え!?ちょ、水樹お兄ちゃ……」
……俺と桜は強制的に2人きりになってしまった。
多分、話し合う機会をくれたんだろうけど……
「…………」
桜は、何か言いたげな表情だけど、上手く切り出せないのか挙動不審になっている。
「桜…その……謝って、済む問題じゃないけど……」
「あ、えっと……それは分かってるよ。日向のせいじゃないって…
記憶喪失の鍵が、空木邸心中事件にあったなんて思わなかったけど……
でも、日向はこうして大切な親友の記憶を取り戻した……
…本当に、良かったと思ってるよ」
どこか、ぎこちない笑みではあるが、嘘を吐いている様には見えない。
「……あ、あのね……日向。」
「な、何かな……？」
「その、私達…温室で……その…だったでしょ？」
「あ、うん……」
「―――それ、全部…本当の事なの？」
………え？
「え？何が…？何の話してるの？」
「え…っ？だって日向、私に言っ……」
「俺、確かに桜にあんな酷い事をしたのは朧気に覚えているけど……他に、何か俺…したの？」
「えっと、その事じゃなくて………」
「…？」
「……ごめん！やっぱ、何でもないや」
桜は、無理矢理笑みを浮かべて話を終わらせた。
良く分からん謎を残したまま……
……何だ…？
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年8月8日 21時
