True END ５ ページ28
お次は西崎先生がいる病室だ。
西崎先生も俺の顔を見て驚きつつ、優しく微笑んでくれた。
「……日向、漸く目が覚めたか」
「はい。…すみません、ご心配をおかけしました」
「…本当に…心配したぞ。何せ、1週間も目が覚めなかったんだからな…
それに……お前自身の事についても、水樹達から聞いている」
「………はい」
「確かに、お前がした事は許されない事だ。しかし…それは、アタシ達全員に言える事だ。
あの時、アタシがもっと合宿を反対していればこんな事には……」
「いや…それは、俺もです。」
「水樹？」
水樹も少しだけ悔しそうな表情を浮かべる。
「俺は、事件の真相や楓達の事を何もかも知っていたんです。
…俺が、もっと楓の事を理解していれば…こんな合宿に反対していれば……もっと菫達に怒っていれば…アイツは、こんな事しなくても良かった……
…日向だって、記憶喪失で苦しんでいたのを見ていたのに…俺は、一瞬でもコイツから離れてしまったんです。
日向にこんな事をさせる要因を作ったのは……」
「………違うよ。誰も悪くない。」
「……日向？」
「…結果的に、この合宿で俺は過去と……紅葉と向き合う事が出来た。
……俺がした事は取り返しがつかないけど、俺は俺なりに出来る事はしようと思います。
親友の紅葉が、俺を助ける為に立ち向かって命を落とした…
俺に出来るのは、親友の助けられた命を、無駄にしないように生きる事……
……何て、あんな事した俺が言える立場じゃないんですけどね…」
「………お前……」
「……親友に助けられた命、か…」
西崎先生が懐かしそうに笑う。
「…アタシは、8年前の神裂島の件で今までずっと生きる意味を失っていた。
どうして自分だけが生き残って信彦は死んでしまったのか……
信彦を止める事が出来なかったアタシは、何の為に生きているのか……」
「先生……」
「けど……お前の言う通りだな。
アタシが今生きているのは、親友の信彦がアタシに「生きて幸せになって欲しい」から……
だから、生かしてくれた……アタシを助けてくれたんだ……
なら、アタシは信彦の最後の願いを、精一杯叶えないとな……」
その目は、以前よりも希望に満ちた瞳だった。
「日向…色々思う事はあるだろうが…
1人で抱えるのが辛くなったら、アタシ達に声をかけてくれ。
そして……これからも、懸命に生きてくれ。それだけだ」
西崎先生は、いつになく優しい顔でそう言った。
俺はその言葉に、大きく頷いた。
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年8月8日 21時
