第428話 愚かな俺の罪の記憶 ９ ページ3
目覚めた俺は、辺りを見渡す。
どこかの家のリビングだと思う。
だけど薄暗くて、ゴミが少し散らかっていて…
とてもじゃないけど、ここにはあまりいたくはない。
窓を見ると、外はもう真っ暗だった。
俺の隣には…横たわって寝ている、傷だらけの男の子。
俺よりはちょっと大きいけど、とても弱々しい……刹那さんそっくりの、男の子。
「(もしかして、この子が…柊君？)」
紅葉と楓の言う通り、刹那さんは柊君を虐めていた。
だけど、こんなに痛々しい姿になるまで酷い事をしていたというのは、予想外だった。
如何に自分が楽観的に考えていたのかも、思い知らされた。
どうして、俺はこんな所にいるんだっけ。
お父さんとお母さんは…？
水樹と桜と杏は…？
俺は……
「………」
目が痛い。
頬が濡れている。
寝ていたのに、泣いている。
……そうだ…俺は、空木の家で……
「楓、柾さん……」
柾さんは、もう帰宅しているとは思うけど…どうなったんだろう。
きっと柾さんは今、紅葉と梓さんの姿を見て俺以上に涙を流しているに違いない。
楓は無事だろうか。紅葉の言葉通りなら自室にいるはずだが…
もし無事だったとしても、双子の弟と母親を亡くした事に、心を痛めている。
「紅葉…梓さん…」
俺のせいだ。
俺があの時インターホンを鳴らさなければ…
俺があの時一緒に温室に行っていれば……
否、そもそも……
俺が、あの時点で刹那さんを引き留めていれば……
あの時、ちゃんと動いていれば紅葉を連れ出して、家から警察と救急車に電話だって出来たはずなのに…
どうして、俺はこんな時に何も出来ないんだろう。
どうして、俺はこんな時に何も動く事が出来ないんだろう。
どうして俺は……
…誰1人として、助ける事が出来ないんだろう――――
紅葉……
きっと、何も出来なかった俺を死んでも恨んでいるかもしれない。
逃げて、という言葉に何も出来ずに死なせてしまったその罪は、死よりも重い。
否……それ以上に、俺の軽率な行動のせいで君を誘導して
楓を、柾さんを残して、紅葉の何もかもを奪って…
俺のその行動は…
きっと…紅葉は、俺を許さない。
親友の俺が、紅葉の人生を奪った。
それは、もう変えようのない事実だ。
その時だった。
(―――だったら、その罪を全部背負って苦しんで生きれば良いんじゃない？)
あの子供の声が、あの日から聞こえる様になったんだ。
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年8月8日 21時
