第437話 あの子の望みは ２ ページ12
罪悪感、自己嫌悪
それらに固められた何かは、今まで「死による償い」だと思っていた。
「紅葉に恨まれていると思い込んでいるお前のしている事は、アイツの優しさを否定する事になる…」
「ち、違う…紅葉は本当に優しくて…ずっと一緒にいたかった…でも……！」
「…それが、お前の答えだろ？」
「え…？」
「お前は、紅葉に恨まれたい訳じゃない……死んで償えるなんて思っちゃいない……
お前が紅葉の事を信じているなら、それは望んじゃいけない……と俺は思う…」
…柊君のその言葉は俺にだけじゃなく、自分にも問い掛けている様だった。
「……日向はさ」
水樹がまた俺に語り掛ける。
「…お前は、紅葉に対して何がしたい？」
「……償いたい」
「また、死んで詫びるって言うのか…？」
「…紅葉が望んでいるなら、そうしたい」
水樹が、ハァとため息を吐いた。
「もし紅葉が本当に望んでいるなら、俺は今すぐ死んで紅葉に会って一発殴ってやる」
「ちょっ…!?」
楓君が少し焦った表情になるが、お構いなしに水樹は話を続ける。
「けどアイツはそんな事望んでいないと思うし、知りたきゃ天寿全うしてから聞くんだな。
そうじゃないと、アイツ余計に怒るから。
いずれにせよ、そうなる時が来たら俺も一緒だから」
「……水樹」
「僕も一緒だよ」
「楓君？」
「…俺も」
「柊君も…」
「―――あの時」
楓君が涙目で口を開いた。
「紅葉の傍にいた僕が、紅葉がいない事に気付かずに眠ってしまった…
あの時、僕が起きていれば……ってずっと悔やんでいた。」
「それを言うなら俺だってそうだ。あの日、自分勝手な理由で日向達から離れた。
もし離れていなければ…何か変わったかもしれない」
「…俺も、後ろめたさを優先したせいで空木家に行かなくなっちまった…
あの時、紅葉と楓の傍にいてあげればどんなに良かったか……親父の事をもっと警戒していれば……」
水樹も柊君も、顔を伏せて苦しそうに言う。
皆、悔やんでいた。
皆、紅葉の死を……
「お前だけが、抱えるんじゃない。
事件の事…紅葉の事…今回の事は、俺達全員が抱えなきゃいけないんだよ」
水樹の目が、少しだけ光った様な気がした。
「日向。お前は、本当はアイツに何をしたい？
償いよりも、本当はもっとしたい事があるんだろ？」
「したい……事……？」
だって、俺は紅葉に会えないのに…
もし、会えたら………
「………あ……」
そうだ。
俺は………
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年8月8日 21時
