第366話 それぞれの正当な行為 ページ9
僕は駆け足で逃げた。
ただ逃げるだけじゃない。
水樹君の狙いは今の所僕だが、もしかしたら矛先を変えて柊達全員を殺す可能性がある。
なるべく水樹君の目に留まる範囲で離れて、視点を逸らさない様に慎重になる。
その間に屋敷から離れた場所に逃げて……
水樹君を止めなければならない。
こんな事になったのは…元を辿れば僕が水樹君を裏切ったからだ。
何も言わなかったせいで、水樹君は混乱してしまった。
柊に対してもだが…柊は普段から僕の言動を知っているが故に言えなくなってしまったのだろう。
柊は、あの日から孤独で泣いていた僕のずっと側にいてくれた……
柊が一番、僕の心の内を理解してくれているから…僕の計画に手も口も出さない様にしてくれたのかもしれない。
だから2人は悪くない…これは、僕の独断による計画だ。
だけど……
【え〜っ、なんか面白そう‼】
【10年間謎に包まれている一家心中事件ね…確かに興味があるわ。】
【う〜ん、確かにそう出来たらワクワクするが、他人が所有している土地や建物に無断で入るのは…】
ギリッ、と無意識の内に歯軋りを立ててしまった。
どうしても許せない。
僕は、あの事件で色んなものを失った。
家族が無惨な姿になって…痛い思いをして死んだ。
お前達には分からない。
失う事がどれだけ辛い事なのか…
それを面白そう？ワクワクする？興味がある？
だったら、お前らが興味のある面白そうでワクワクするあの陰惨な事件を味わって…苦しんで死ねばいい!!
だから間違っていない…
これは立派な…正当な行為だ…！
水樹君だって、それは理解してくれてる筈なのに……
開けた場所は、とても広い空間だった。
木漏れ日が差している。
周りは樹々、地面は雑草で覆われている。
殺風景な空間。
どこか…見覚えがある。
「足、遅くなってるぞ」
追いつかれた…
「あれだけ人の命を奪っておいて今更命乞い？」
「君は、自分がしている事を理解しているのか…？」
「何が？」
「さっき君は、自分の口から言ったじゃないか！」
『命なんか、誰かが奪っていいモンじゃねぇんだよ…！間違った事を教えるのも必要なんだよ…！』
『何でだよ、何でいつも間違った事は教えてくれるお前が、何で間違った事をしているんだよ！』
「僕だけならまだ分かる…でもどうして日向君達を殺す必要があるんだ!?」
「だから言ったじゃん。俺がしている事はちゃんと元通りにする為の……正当な行為、だよ」
第367話 血染めの花に復讐を １→←第365話 僕と君の鬼ごっこ ２
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：tsurara | 作成日時：2018年5月8日 20時
