第400話 些細なきっかけ ページ48
「けど…日向は何をしたんだ？遺体が発見される前となると……」
「自由時間か？」
「全員の自由行動なんて、把握してねぇし…」
自由時間……何をしていたんだっけ…？
―――桜と一緒に竹貫先生の様子を見に行って…
俺の荷物にリンゴがあるから、それを取りに行こうとしたんだ。
確か、そう言ってたな…
なら、【桜と別れて】から【竹貫先生のいる応接室に向かう】までの……その間が知りたい。
応接室の前…
リンゴがあるから、部屋の荷物の中を…
部屋？荷物？
まさか…
「皆の荷物を、部屋に置きに行ってた時…？」
僕がそう言うと、2人は同時にこっちを見る。
「に、荷物…？」
「ほら、1日目に僕達は西崎先生の指示で一緒に行動して、その後に杏ちゃんや椿部長と合流した時だよ。…杏ちゃん、こう言ってたよね？」
【…日向お兄ちゃんはさっきまで私と一緒に椿先輩のお手伝いをしたの。
ほら、皆の荷物玄関に置いたままだったでしょ？
椿部長がそれを見て、皆の荷物を寝室に持って上がってくれたんだよ！
私もそのお手伝いをしたの。その時に日向お兄ちゃんが通りかかって、「男子の荷物を運ぶ」って言って手伝ってくれたんだ。】
「けど、男共の荷物を部屋に運んだからって…それが何になるんだ？」
「…水樹君、昨日の朝…君と桜が僕達の部屋に来たの…覚えているだろ？」
「あ、うん…」
「その時に君、僕に「小学校の頃の写真も見せて」ってお願いしたの覚えてる？」
「おう…だけど、なかったんだろ？で、結局その後はお開きになったけど…」
「うん、なかったんだよ……
【10年前の僕と紅葉、水樹君と日向君が写っている写真】がなかったんだ！」
その事実に、水樹君は目を見開いた。
「……実は、それだけじゃないんだ…【10年前の僕達の家族写真】も消えていたんだ。君と桜が自室に戻った後にあちこち探しても見当たらなくて…」
「じゃあ、記憶を取り戻したとしたら……そこで…？」
「1日目で日向君は男子達の荷物を置きに行った際、何等かの形で僕達のアルバムを見てしまったんだろうね。そこで日向君は写真を見て記憶を取り戻してしまった…またはそのきっかけが生まれた…」
「だとしたら…アイツは、最初から錯乱状態だったのか!?」
「だろうね…それでも竹貫先生にリンゴを食べさせる為に平常心を保とうとしたんだろうけど……耐え切れなくて、応接室に辿り着いた時には…」
ほんの些細なきっかけが、日向君の記憶を刺激してしまったんだ…
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年5月8日 20時
