第383話 部長の遺体調査 ページ27
「他は…？」
「あ、そうだ…椿部長の部屋から見つけたんだけど…」
そう言って楓が取り出したのは……あのオレンジジュースのペットボトルだ。
しかも、量が最後に見た時に比べて減っている。
「……まさか、部長さんが感染しているのって…」
「多分、部長は自分から飲んだんだと思う。…死のうと、したんだろうね…」
「そんな……だって、変な事には使わないって…」
「その変な事には使わないって言うのは……恐らく、僕達を感染させる様な事はしないって意味…だろうね。」
…そんな…
「…恐らくだけど、最後の最後で部長は…今までの事全部に…罪悪感を覚えたのかな…」
妹さんの事
杏の事
日向の事
この合宿の事の発端の事
もしかしたら、今までの自分の事を振り返って……？
「だけど、何もこんな形で全部の事を清算する意味なんかねぇだろ……」
どうしてだよ…
何で、また…？
俺は……部長さんには、生きてて欲しかったのに
あの日、少しでも腹を割って話し合えた事も
俺に心を見せてくれた事も
俺と話す事に、救われたと話してくれた事も
そんな部長さんを、俺では幸せには出来ないかもしれない。
だけど俺は……
彼女には…生きて、幸せになって欲しかったのに……
「…水樹君……」
楓が、躊躇いがちに俺に声を掛ける。
……そうだ、今は…
「今は、正気を保たないと…な…」
「……うん。」
2階にはそれ以外に特に何もないという事で、俺達は1階を調べる為に階段に向かう。
階段付近……下を見下ろせば、踊り場に部長が相変わらずこっちを驚愕の目で見ている。
「……それにしても、何で椿部長がこんな所に…？それに、何か…部長の目の方向って、今僕達がいる位置を一点に見ている気がするんだけど…」
「…誰かに、突き飛ばされた可能性が高いな。打ち所が悪かったのかもしれない。」
妙に長く感じられる階段を降り、彼女の元へ辿り着く。
「……部長さん…」
頭と口から血を流している辺り、顔面から行ったんだろうな。
そこから転がる様に落ちて……
「…けど、ここまで怖い表情でこっちを見ているって事は……突き飛ばした人は、少なくとも彼女にとって予想もしなかった人物なのかもしれないね。」
第3者なら、部長さんも恐らく予期せぬ事だったからこの表情をするのは分かるけど…
(……けど、もし…俺達の中だったら……？)
……ダメだ、今はそんな不用意な事を考えるな。
そんな余計な事を考えるよりも、今は別の事を優先させないと…
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年5月8日 20時
