第375話 親不孝者 ２ ページ18
思い起こせば…幼い頃から、お母さんは俺に冷たかった。
というか、それしか記憶がない気がする…
と言っても、具体的に何をされたとか、そう言う記憶はない。
ただただ本能がお母さんに対してそう感じてしまうだけなのだ。
幼い頃、交通事故で入院して目を覚まして女の人を認識した時…正直、目の前にいるあの人が俺のお母さんだと察した時…何故か身震いした。俺の母親嫌いはもうそこから芽生えていたのだろうか…？
交通事故……そうだ、柾さんの日記にも書いてあった通り、俺は交通事故で生死の境を彷徨っていた。
あの時は…お母さんは目に涙を溜めて俺の名前を叫んでいた。
「生きてくれてありがとう」と言ってくれた。
まぁ…そりゃ、そっか。誰だって、子供は幼い頃の方が可愛いに決まっているし。
純粋で、何の穢れも知らない、全てか綺麗事で片付くと信じて、周りの人達が何でも言う事を聞いてくれて、思い通りにならない時は泣き叫んで解決させて、争いのない平和な世の中だと思い込んでいる子供
「そんな世界だったらとても良いね」と昔の俺に皮肉の1つは言ってやりたい。
自分達が住む世界を知る内に、自分や周りの人間達の汚い部分が見えても、平和な世の中と信じられるのだろうか。
そこに俺の…「自分の価値」を見つける事は可能だろうか……
――――閉じていた瞼に、光が広がった。
目を開け、視界には樹々、木漏れ日…
そこで俺は、自身が仰向けで倒れているという事に気付いた。
起き上がろうと手を動かした時…
固い様な柔らかい様な…何かを掴んだ気がした。
そこで俺は、誰かが覆い被さっているという事に気付いた。
「！」
その誰かの存在を察知し、俺は上半身を勢いよく起こした。
「――――楓！」
楓は、俺の肩に顔を埋める様な姿勢になる。
楓は動かない。
声をかけても反応しない。
「……嘘、だろ……」
10年前、俺は今と同じ場所で足を滑らせて落ちて…
今度は、楓を巻き込んでしまった……
「くそっ……」
後悔のあまり、楓を抱きしめる腕が強くなった――――その時
「―――うぅっ……」
微かに、呻き声が聞こえた。
生きている……？
俺は、楓の顔を見ようと体を動かそうとして………
ドサッ……
気を失っていた奴が、急に覚醒したかの様に俺を押し倒した。
楓は、俺を見下ろしている。
この顔は怒っている顔だろうか。無茶苦茶真剣な顔してるけど……
「……楓…」
「―――水樹君、捕まえた」
第376話 偽善とは何か １→←第374話 親不孝者 １（水樹視点）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：tsurara | 作成日時：2018年5月8日 20時
