第369話 今の私に出来る事（桜視点） ページ12
あれから何時間経ったんだろう…
時折下の階で何か物音聞こえた様な気がしたけど…多分、日向と楓と柊が、水樹の帰りを待っているのだろう。
私は………このままで、良いのかな。
だって、これ以上何かする事はあるのだろうか。
私にはもう何も出来ない……
ううん、だからこそ動かないと。もう、怖いものはない。
毒は…確かに水樹と楓は感染者ではあるけれど、植物はもう燃やされている以上この屋敷はおろか、森には存在していない事はほぼ明確だ。
それに…私はまだ水樹と楓にきちんと謝っていない。
今の私に出来る事は、2人が助かる方法…または時間稼ぎになれる何かを探す事。
もう…それしか残されていない。
前向きにならないと…
「うん…しっかりしないと！2人を助ける為にも…！」
私は両手で頬をパンパンと叩いた後、部屋から出た。
「まずは…やっぱり書斎かな…」
菫や杏の時は時間が残されていなかったけれど、水樹と楓は夜明けまでだ。
まだ、時間はたっぷり残されている…
それまでに、何か見落としているものがないか確認しないと…！
同じ2階とはいえ、やはり空木邸は大きな屋敷。
こんなに長い廊下を、10年前に楓や日向達は歩いていたんだな…
真実を知り、何もかも終わった今だからか冷静にそんな事を考えてしまう。
……ん？
書斎付近で、何かを見つけた。
これは…!?
「わっ!?ちょっと…これ……」
日向と水樹…それに、楓と紅葉って子の4人の写真だった！何でこんな大事な物を…！
昨日、楓と柊の部屋でアルバムを見せて貰った時の事を思い出した。
「(まだ記憶喪失の日向に見られたら、日向混乱しちゃうよ！危ないよ！)」
私は、2人の部屋に顔を向ける。
2人の部屋は書斎からは少し離れている。
こんな所に…
けど、2人はこんな大事な物を…こんな場所落とすだろうか？
いや、そもそも…写真そのものを所持して廊下に出るのだろうか？
「(楓は柊の写真を他の人達に見せたくないだろうし…そもそも2人共、混乱を招かない様に水樹と日向が写っているものは極力見せない様にしていた…はずだと思うけど……？
柊は絶対に見られたくないですって全身にそんなオーラ纏っていたし……)」
それか、案外お守りみたいに扱っていたのかな？
「いや、だとしたらもっと大事にしなきゃでしょ……」
まぁ、今は良いか……
「……」
書斎の部屋を開けようとした時、つい隣の椿部長の部屋を一瞬見てしまったが……
なるべく無視して中に入った。
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作者名：tsurara | 作成日時：2018年5月8日 20時
