#２−５ Taiga Dramachu ページ14
．
『まつくさん………』
倉『へ、なになに、
なんで泣いてんの？！』
『…ッ、やりました…』
倉『え？』
『大河ドラマ決まりました！！』
.
スタッフ「Travis Japan・松倉海斗さん
クランクインで〜す！」
スタッフさんの声にはっとし、前を向く。
倉「松倉海斗です！
よろしくお願いします！！！」
ひと際大きな声が響き、共演者さんや
スタッフさんが、元気がいいと
微笑ましそうに笑っていた。
わたしがトラジャかJUMPかで
悩む前に届いた大河ドラマの話。
だいぶ前にオーディションを受けていたから、
一瞬何のことかわからなくて、頭が真っ白に
なって、それからすぐダンスレッスンの
休憩中だったまつくさんの元に走っていったんだ。
もちろん周りには他のみなさんもいて、
みんなで喜んだ。
胴上げも３回した。
そして今、作り込まれた昔の街並みの
セットの中、大御所俳優さんたちに
声を掛けられているまつくさん。
ああ、また視界がぼやけてきた。
ツンと痛む鼻を押さえていると、
隣にいた東郷さんがハンカチを
スッと差し出してくれた。
「ありがと…」
東郷「こんなに泣き虫だったかな、
俺の知ってるAちゃんは」
なんていじわるを言ってくる彼を
じとっと睨みながら、受け取った
ハンカチで涙を拭いた。
だって、こみあげるものは
どうしようもない。
東郷「…Aちゃんが１年で
磨き上げてきた彼らは、今
とてつもなく光輝いてるよ」
まつくさんを眩しそうに
見つめた東郷さん。
東郷「よく頑張ってきたね」
ぽん、と頭を優しく撫でられて、
さらに涙がこみ上げる。
「も…やめて…」
東郷「Aちゃんが泣くの
珍しいからね」
あはは、と笑う彼は、昔からの
知り合いとはいえ、のえるくんよりも
年上の大人の男性だ。
メンバーでもないし、気兼ねなく
わたしが甘えられるように、と
滝沢くんからの配慮だって、
お父さんが言ってた。
ありがたいなあ、と思いながら、
まつくさんを見た。
「、？」
ばち、と目が合い、すぐに逸らされる。
いつもならニカって笑うのに。
東郷「…でも、」
口を開いた東郷さんを見上げる。
東郷「ちょっと懐かれすぎじゃないかなぁ」
キラッと光ったメガネがちょっと怖くて、
わたしは聞いていなかったフリをした。
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作者名：エキゾチック幸助 | 作成日時：2022年1月14日 22時
