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「ッそれ、」
倉「俺だけじゃなくて、みんなそうらしい。
悪いんだけど、あんまり俺らから離れないで
一緒にいて？Aも危ないかもだし、
一人になんないようにして」
「…は、い…ごめんなさい、気づけずに」
倉「いやいや！俺らって視線に敏感だからさ？
気のせいかもだけど、用心すんのに越したことないし！」
再度頭を撫でられ、撮影再開の合図に
席を立ったまつくさんを見送る。
全然、気づかなかった。
タレントの身を守るのがいちばん大切で
重要なことなのに、最悪だ。
自己嫌悪に陥っていたわたしは、
まつくさんがメンバーや他マネさんたちに
視線を送って頷いていたことに気が付かなかった。
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「絶対に反対です」
わたしの声が部屋に響く。
静かに言ったつもりなのに、
大きく聞こえてしまうのは、
わたしの意志の強さもあると思う。
滝沢「でも、今が好機だと思うんだ。
あいつはかなり勢いがついてて、
ファンも急増してる。押し出すなら今だ」
「ファンが増えてるのは前々からですし、
デビューして数年でそんな話、前代未聞では？
なぜ今なんですか」
スタッフ「彼の武器はダンスを抜けば歌と作曲。
彼の歌を主題歌にと言ってくれている映画が
あるんだよ。彼が売れればトラジャも売れる。
これはグループのためでもある」
沈黙が流れる。
この話をされたのは、何度目だろうか。
滝沢くんもスタッフさんも、
言ってることは間違ってない。
ここで彼がもっと人気になれば、
トラジャにとってプラス。
でも、
「なぜ今なんですか、と聞いているんです。
みんながハリウッドという同じ方向を向いて
ひたすら頑張っている今、ただでさえ体力的にも
厳しいスケジュールでナーバスな彼がさらに
負担を背負うようなことを…」
滝沢「彼の才能を無駄には出来ない」
滝沢くんの鋭い声に、口を閉じる。
滝沢「主題歌をソロでなんて話、前代未聞だ。
だからこそ、話題性もあるし注目される。
彼の才能を世間に広く知ってもらう絶好の
チャンスを、お前は摘み取るのか？」
そう言われて、何も言い返すことが出来なかった。
何が正しくて何が間違っているのか、
わからない。
その夜はろくに眠れなかった。
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#２−９ Solo→←#２−８ Makoto no Toraja
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作者名：エキゾチック幸助 | 作成日時：2022年1月14日 22時
