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間を置いて呟いた元太に、一瞬反応に困る。
前に恋愛映画にも出てるのに、
何か困ることでもあるのかな。
「どした?」
元「………前は、初めてのW主演で、
トラジャがバリバリデビューに向けて頑張ってた時
だったから。何も考えず役に入ってたんだけど」
「うん」
言い淀む元太に、今彼が自分の胸の内を
聞かせてくれるのだと悟り、
できるだけ穏やかに返事をする。
一点を見つめて言葉を考えている様子に、
お茶のキャップを開けて口につける。
元「…、なんか、最初は何でもなかったんだけど、
最近、台本読んで、キスシーン見たら、
Aの顔が浮かんでモヤモヤすんだよね」
突然出て来た自分の名前に、
変なとこに入る前にペットボトルから口を離した。
「え、な…、わたし?」
元「そ。俺風邪引いたときあったじゃん。
あれでAが看病してくれてさ、
こうやって名前でタメ口で喋れるよーになって、
そのときから、もうそんな感じで」
「そ、うなんだ」
何を言われてるのかよくわからず、曖昧に頷く。
キスシーンであなたが思い浮かんで困ってますって
言われて、どうしたらいいんだ。
元「Aってキスしたことある?」
「え、まああるけど」
元「俺は多分Aよりもしたことある」
ムカッとして元太を見ると、動けなくなる。
だって、ひどく優しい目でわたしを見てたから。
膝に頬杖をついて、甘く微笑んで。
「……ッ、」
元「ね、お願い聞いて?」
椅子から立ち上がった元太をぼーっと見てると、
ずいっと顔が近づき、端正な人懐っこい笑顔が目の前にくる。
「え、なに」
元「キスシーン、撮る前に、Aとしときたい」
「えっ」
衝撃的なセリフに言葉を失っていると、
熱を孕んだ元太の瞳がもっと近づいて、
熱い吐息を唇に感じる。
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作者名:エキゾチック幸助 | 作成日時:2021年9月24日 11時