#２−４４ Maenisusumasete ページ26
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すっかり正月気分も抜けて、
気を引き締めて日々仕事に励む毎日。
「…ふう、」
けれど最近、あることが悩みのタネと
なっていて、よく眠れない。
七「どうしたの？疲れちゃった？」
「しめさん…ちょっと寝不足なだけです」
七「寝不足はお肌に悪いししんどいよね〜。
待機中だしちょっと寝ててもいいよ？」
「いえ、これ終わったら直帰ですし、
もうちょっと頑張ります」
七「そっか…ムリしないでね？さっき
差し入れに有名なドーナツもらったから食べよ！」
心配して声を掛けてくれたしめさんに、
心があたたかくなる。
今はしめさんのネット配信恋愛ドラマの撮影中で、
機材準備の待機時間だ。
ちょっと時間が空くと、あの件について
考え込んでしまうから良くない。
また考えてしまいそうになる頭を
ぶんぶんと振って、しめさんの後を追った。
七「じゃあすぐ寝るんだよ？寝れなかったら
電話かけてきていいからね」
「ありがとうございます、おやすみなさい」
七「おやすみ！」
ニコニコと花が咲いたように笑うしめさんに
ほっこり癒されつつ、車を事務所に置き、
すぐに帰路についた。
川上「こんな時間に一人歩きは危ないよ」
人通りのまばらな道を歩いていると、
突然声を掛けられた。
顔を見なくてもわかる声の主に、
ずっしりと心が重たくなったのを感じる。
「………警察呼ぶ」
川上「痴話喧嘩で済まされる」
「大声出す」
川上「口をふさいじゃえば聞こえない」
即座に返ってくる返事に、
当時のことが嫌でも思い起こされる。
口喧嘩には勝てなかったけど、最後には
お互いに謝って必ず仲直りをしていた。
多少強引なところもあったけれど、
前を歩いてくれる人がいるのは
とても気が楽だった。
川上「まだマネージャーやってるんだね」
髪も切っちゃって…と髪を梳(す)かれ、
抵抗するかどうか迷ってしまう自分に驚く。
川上「やっと警戒心薄まった？
ご飯行こうよ、いつものとこ」
そう言われて思い出すのは、オープン初日に
訪れてから定期的に通っていた、カフェ。
朝から深夜まで空いているそのお店は、
わたしたちの憩いの場所だった。
「………、行かない、はなして」
一歩うしろに下がり、距離を取る。
川上「…絆(ほだ)されちゃいなよ。
前みたいに、ずっと一緒にいよ」
取った分以上に距離を詰められ、
耳元で囁かれる。
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作者名：エキゾチック幸助 | 作成日時：2022年10月31日 16時
