プリント (5/25) ページ36
突然のチャイムの音に驚きながら
ドアを開けたら北斗がいた。
「北斗じゃん」
「"じゃん"って。俺にプリント持ってきてって言ったのお前じゃん」
白Tと体の隙間に風が入り込んで涼しい。
夏だな。あ、でもその前に梅雨か。
そういえば講義のプリント俺の分も取っといてって頼んでたような。
はーあ？って呆れ顔の北斗。
健気だよなほんとに。
「…とりま入る？」
なんでだよ、ってぶつぶつ文句言いながら結局スニーカー脱いで入ってくる。
「おまえってほんとに俺のこと好きな、」
「はあ？樹の方じゃんそれは」
なんだよこの会話。
ふと我にかえったら、急に喉が渇いた。
いつ買ったのかわからない、冷蔵庫に入ってた炭酸水を見つけて手に取った。
蓋をひねったら、蚊の鳴くような破裂音。
まあ冷やしてたし大丈夫だろう、ともはや水になった炭酸水を飲み干した。
ぽーっとラグに座る北斗の後ろ姿を見てた。
丸っこい髪型。きのこみたいな。うん。
そしたら北斗が振り返って目が合った。
「おめでとう」
「は？」
「は？」
一瞬言葉が消えて、どこか遠くで電車の音がした。
「え、Aと付き合ってんだろ」
「あーいや、え、てかなんで」
「これ」
北斗が見せたのはさっき俺が手に取ったピアス。
「これ、Aのピアスでしょ」
「そうだけど。おまえそんなとこまで見てんの？きもっ」
「ちげえよ、これ俺が誕生日にやったやつな」
うわ、なんか嫉妬する。
あいつがあげたピアスつけてんの？
すげえマウントとられた気がした。
別に競争してたわけじゃないけど、
北斗より、Aちゃんにとって近いところにいるって思ってちょっと調子乗ってた自分が恥ずかしくなった。
「で？付き合ってんじゃねえの？」
そんな真っ直ぐな目で見つめんな。
ほんとのこと言ったら、Aちゃんとの距離が離れて行く気がした。
でもうまく嘘つくなんて、こいつの前でできるわけがなくて。
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つき(プロフ) - sailさん» 素敵なコメントまでくださって、とてもうれしいです（ ; ; ）こちらこそ、ありがとうございました。今日はいい夢が見られそうです。 (2020年12月10日 12時) (
レス) id: 7ed4157c8a (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - とってもとっても素敵な作品すぎてコメントさせていただきました。ふたりのもどかしい距離にキュンキュンしました！素敵なお話をありがとうございました。 (2020年11月9日 13時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つき
| 作成日時：2020年5月5日 0時
