頑張る権利 ページ12
今までで一番近い距離で
聞こえてくる息。
生きてるんだ。
いや、当たり前なんだけど。
こんなに愛おしい存在が一番近くで息をしてる。
髪の毛から覗くやわらかそうなほっぺ。
ちょっと赤くなって、なんならその下の唇も赤い。
おいしそう。
触っちゃう。俺もう無理。触るだけならいいよね？
「じゅりーー？」
あぶね。
台所で洗い物終わったらしい北斗が戻ってきた。
「なっ、なんだよ」
北斗のせいで、Aちゃんが起きた。
んう、ってかわいい声つき。
録音させて。
変なことには使わねえから。
離れてく体温。
さみしい。
「あ、ごめんなさい、帰んなきゃ」
「泊まってもいいけど、帰る？」
おい！俺だけのときには早く帰れって追い出すくせに！
「うん、明日早いから」
「あー…じゃあ…」
北斗がしぶしぶ、といった感じで俺を見る。
「わるいけど樹、送ってくんない？」
うん！全然悪くない！むしろいい！
「わかった！」
「なんか…心配だわ」
すぐ立ち上がって帰る準備し始める俺を見て
まじで心配そうに言う北斗。
「なんでだよ、まかせてよ、ね、北斗」
にっこり笑顔見せたらもう呆れて何も言えないって顔。
「じゃ、気をつけて」
「うん、本当に今日はありがとう楽しかった！」
北斗には満面の笑み見せるじゃん。
「北斗くん、また今度お礼させてね」
「ん。樹はオオカミになるなよー」
「うるせえよ、ん、じゃあな」
北斗んちを出て、
寒そうに手のひらに息を吐いてあっためる仕草。
今までの俺だったらその手つかんで
繋いじゃってたな、なんて思えるだけまだ冷静か。
寝起きでまだふわふわしてんのか、
たぶんくそつまんねえだろう俺の話を
楽しそうに笑ってくれる。
時々ぶつかる肩。
そのたび俺の心臓がキューってなるんだよ。
ねえ、意識してんのはオレだけ？
切なくて、苦しくて涙出そう。
思わず胸をおさえた。
恋って、本当に痛くなるんだな。
知らなかったよ、俺。
笑うたびに揺れる髪の毛も
いたずらっこの顔するときの口角もかわいい。
恋してるフリでもしてよ。
それだけでいいからさ、それだけで。
バイバイ、って手を振って
何歩か進んだ後に、また振り返った君。
ねえ、俺頑張っていいの？
大きく手を振りながら後ろ向きで歩いてたら、
でっかい石かなんかに当たってちょっとつまずいた。
それ見て楽しそうに笑うんだもん。
止めらんないよ。
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つき(プロフ) - sailさん» 素敵なコメントまでくださって、とてもうれしいです（ ; ; ）こちらこそ、ありがとうございました。今日はいい夢が見られそうです。 (2020年12月10日 12時) (
レス) id: 7ed4157c8a (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - とってもとっても素敵な作品すぎてコメントさせていただきました。ふたりのもどかしい距離にキュンキュンしました！素敵なお話をありがとうございました。 (2020年11月9日 13時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つき
| 作成日時：2020年5月5日 0時
