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出逢ったときの話・一 ページ3

それから、どれくらいの時が経っただろう。僕は一人、入ったこともないような路地を歩いていた。
雨が降っていることもあって、僕の体は酷く冷たくなっている。涙を拭ったときそのことに気がついたけれど、家に帰ろうとは思えなかった。
家に帰りたくない理由は二つある。一つは、突発的なものとはいえ、あの母の毒牙から逃れることができたということ。ずっと望んでいた−−母に金をせびられることなく、自分のためだけに歌を仕事にしたいと。
しかし、二つ目はもっと深刻な問題なのだ。

僕は母に、何をしてしまっただろう……

あまりに興奮し過ぎていて、僕にはついさっきの記憶がまるでなかった。その間に、僕は何か恐ろしい過ちをしでかしてしまったのかもしれない。
「ほんとに、どうしよう」このままここにいる訳にもいくまい。
雨が頬を、首筋を、撫でて落ちていく。熱に浮かされた脳は考えることを放棄し、別のことを始めた。

『たった一人で 何がそんなに悲しいの
 君の泣き顔 見るのは辛いよ
 どんな時でも 君といると笑顔になれた
 だから今度は 僕が君を守ってあげる』

歌っていると、体温が上がっていくような気がした。雨の中でも自在に響く歌声は僕の自慢なのだ。
けれど、それと一緒に、自嘲するように笑っていた。守ってあげる、か。僕にそんなことを云ってくれる人なんていないじゃないか……
背が粟立った。
世界中に、僕がたった一人で取り残されたような−−孤独感が僕を襲う。そうだ、僕は一人ぼっちなのだ。肉親に愛されず、仕事にも喜びを見出せない。僕の居場所はどこにもありはしない……
それに僕は、ショックのあまり、大きな間違いを犯してしまったようだ。真っ暗な路地裏、その先は……

−−横浜租界。

無法者たちが跋扈するという街に、不用意にも近付いていたのだ。

「おい、手前、ここで何してやがンだ」
「ひっ……!?」

だから僕は、少しも考えが及ばなかった−−突然かけられた声が、救いの手であるだなんて。

出逢ったときの話・二→←出逢う前の話



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こんぺいとうくん(プロフ) - コミュ障の極みさん» ありがとうございます〜!!頑張ります!DA、中也さん格好良過ぎでした… (2018年3月16日 21時) (レス) id: 89d22ed41a (このIDを非表示/違反報告)
コミュ障の極み - デッドアップル観れなかったァァ!あと面白いです!更新ファイトです! (2018年3月15日 18時) (レス) id: 0c405ae39e (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとうくん(プロフ) - 真昼さん» あ、あ、ありがとうございます…!(コミュ障)すごい嬉しいです…頑張ります!! (2018年3月10日 15時) (レス) id: 89d22ed41a (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - すごい面白いです、頑張ってください! (2018年3月9日 23時) (レス) id: 85666cc382 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こんぺいとうくん | 作成日時:2018年1月29日 17時

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