幸せになりたい【 伊黒小芭内 】

拾 ページ11

Aside



しのぶさん達に鬼殺隊に入ると宣言してからは
早かった。もともと兄さんから剣技を習っていたので
そこそこできる方だった。
全集中・常中も一足早く身につけた。



しのぶさんや蜜璃さんに稽古をしてもらいながら
月の呼吸の精度をあげていく。
次の最終選別までのあと1ヶ月しかなかった。




(早く、早く、色々身につけなければ。
昔のできなかった私じゃない。
今は月の呼吸だって壱から伍全てできる。)




「A！よそ見をしていると
隙ができますよ！」


しのぶさんが私に向かって刀を下ろしてきた。





ザシュッ




「ッッ！！」



避けたは避けたが、羽織に刀の剣先が
かすってしまったのか
破れてしまった。





「ここまでっ！！」




アオイさんの声が響いた。
稽古はここまでだ。
さすが柱だった。
私も避けたが、それを見越して
剣先の方向を変えていた。
多分私の身体にあたる前に刀を下ろしたのだろう。
そのせいか羽織が破けてしまった。




しのぶさんがこちらにやってきた。


「だいぶ強くなってきましたね。
１ヶ月前までは私の攻撃に反応すら できていなかったのに。ですが油断は禁物です。
反応速度は早いですが、相手の思考を読みとるのも
とても大事です。Aなら、絶対にできます！」


しのぶさんは、暖かい手で私の頭を撫でてくれる
私に初めてあった時も、優しい手で私を受け入れてくれた。


とても嬉しかった。








でも、私は幸せになっちゃいけないんだ。
家族が死んだあの日から。
あの日は月が綺麗だった。




「しのぶさん、ありがとうございます。
柱としての任務もあるのに
私なんかのために稽古をつけてくださって。」


私がお礼を言うと
しのぶさんは首を振り


「全然大丈夫ですよ。
私がやりたかっただけなので
私以外の人にも稽古を頼んではいかがですか？
甘露寺さんとはもう稽古を何回かしていましたよね
私が柱の方に頼んでみましょうか？」






「いえっ！そんなとんでもない！
しのぶさんや蜜璃さんに稽古を
つけてくださるのでも
ありがたいのに、そんなことできなッッ！！」






「では、私は任務があるので
行ってきますね！
柱の誰かに頼んできます。」





「し、しのぶさん！！待ッ...」









私が声をかける前には、もういなかった。

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