【歌い手】この世界の片隅に【短編集】 (ページ9)

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まるで知った道を歩くように迷いなく進む足を不思議に思いながらも、

気にしたら負けだとばかりに身を任せて歩き続ける

まふくんに見送られてからずっと薄暗い森

その間、誰かに会うことはなかった

ただなんとなく何かの気配だけを感じている

若干の薄気味悪さを感じていると、先の方から聞きなれた笑い声が聞こえた

この笑い声、間違いない

確証を持った途端、足が早まる

正直まだこの状況を理解できていない

luzくんは先へ消えちゃうし、まふくんは妙に曖昧な言い方をするし…

だから、少しでもいいからちゃんと話をしておきたかった

笑い声のするほうからは、笑い声の主以外にも聞きなれた仲間の声がする

誰かひとりくらいは相手してくれるだろう

そう思い、道から外れて茂みをかき分けた

急に差し込んできた日の光に目を当てられ、視界を奪われる

それと同時に、鼻孔をくすぐったのは紅茶と甘いお菓子のにおい

状況を確認しようと手のひらで日の光を遮ると、

森の中には不釣り合いな長いテーブルが目に入った

テーブルだけじゃない、こしゃれたたくさんの椅子と

ほかほかと湯気を上げるティーポット、

大きなケーキに山盛りの焼き菓子、クロカンブッシュもある

想像の斜め上を行った景色に呆然としていると、

4人いるうちの1人、お洒落なタキシードを着てシルクハットをかぶったあの人が口を開いた

「やぁ。センラくん。待ってたよ」

妙に安心感のある低い声でそう言って、眠そうな瞳でほほ笑むのはそらるさん

彼のその声に、回りで騒いでいた3人もこっちを見た