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あれから数日。
放課後、忘れ物をして教室へ行くとAさんがいた
正確に言うのなら、ボロボロで倒れていた
この瞬間、僕を襲った背徳感は言葉にならない
声をかけていいものか
僕にかける資格はあるのか
硬直し、思考を張り巡らせているとピクリと彼女が動いた
そしてそのままムクリと起き上がると、彼女は床に座ったまま天を仰いだ
つい見蕩れていると、長い髪の隙間からこっちを見る瞳と目が合った
ドキリと心臓が鼓動して、ヒュッと息が詰まる
しばらく見つめあっていると、彼女は髪を正し、立ち上がった
「ぁ、ちょ、A…さ、ん…」
思わず声が出てしまい語尾が消えかける
無視されるかなとも思ったけど、彼女はチラリと横目で僕を見た
なにか言わなきゃ、なにか言わなきゃ
そう思った挙句、口をついたのは
「大丈夫?」
という最低な言葉だった
僕のせいでこんなことになっているのに
僕のせいなのに、なのに「大丈夫?」だなんて…
即刻発言を取り消そうとした時、彼女が少しだけ口を開いて言葉を発した
「…大丈夫。なんともない」
かすれ声でそういうAさん
この前の芯の通った声とは大違いだ
僕はなんてことを…
「自分のせいだ…なんて、思わなくていいから」
「でも…」
「そういうのめんどくさい。私が勝手にやったんだから貴方は運が良かったと思えばいい」
ぶっきらぼうな言い方だった
まるで突き放すような…
当たり前だ、突き放して当たり前だ
だって僕のせいで…
「だからっ…!」
「まふまふ?」
Aさんがなにかを言おうとした瞬間、聞きなれたそらるさんの声が聞こえた
後ろを振り返ると、キョトンとした顔でこっちを見ているそらるさんがいた
遅かったから迎えに来てくれたんだ
暖かい気持ちになっていると、Aさんが颯爽と僕を横切って教室をでていった
彼女の顔が歪んでいたのは、きっとどこか痛めたのだろう
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作者名:武蔵野 三歩止(ムサシノ ミホト) | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年7月1日 16時