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☆★☆


数年ぶりにあった女の子―――Aちゃんは、昔よりも少しだけ背が伸び、髪も伸びた

そして……変なところに耐性がついてしまったみたいだ……


目の前で必死に涙を乾かそうとしているAちゃん

その姿は数年前と変わっていない

ほんの数か月、お店で会う程度の付き合いであった俺たち

たったそれだけ関係。

その程度の関係で踏み込むのはどうかと思うけど……




「Aちゃん……」




どうしても、放っておけなかった……




「……なん、ですか?」


「嫌なことは嫌でいいんだよ?受けて入れちゃわなくて……いいんだよ」




浴びせられる罵声に微動だにせず、ただ用意された謝罪を述べていた彼女の姿が頭をよぎる

メラメラと燃える男に比べ、湖畔のような静けさを持っていた彼女

まだ若い女の子が諦めてしまっている姿が、なんでか見てられなくなった

だから横やりを入れたときは、この女の子がAちゃんなんて思わなかったんだ


そのあと覗き込んだ彼女の顔。

男を見送る彼女の瞳には、なにも、なんの感情も宿っていなかった

それがなんか嫌で、知り合いだとわかったらもっと嫌で……

俺は……




「そらるさん。そらるさんは……優しいですね」


「……へ?」


「昔も、今も、知らない子のために行動して。久しぶりにあった私の心配をしてくれてる」




そんな人ほとんどいませんよ。そういいヘラっと笑って見せたAちゃん

その笑顔がひと昔前のあいつに……俺の名前を呼んでは変な行動をする男に似ていて、やっぱり俺は嫌な気持ちになった


何も言わなくなった俺に未だに笑顔を向けるAちゃん

怒られるなら怒られるでいい

嫌われてしまうのならそれもしょうがないだろう

そう覚悟をしたうえで、Aちゃんの腕を引き腕の中へ引きいれた

すっぽりと俺の胸に収まるAちゃんは、

状況がまだわかっていないのか、きょとんとした顔をしている

そんな彼女の後頭部と背中に腕をまわし、抱きしめた




「ちょ!そらるさん!なにしてッ」


「Aちゃんは……もうちょっと人を頼っていいんじゃないかな」


「……何言って……私は頼ってますよ?先輩店員の人たちとか……」


「違うよ。なにがあったかわからないけど…理不尽になれちゃダメだ。誰かに頼ることをあきらめちゃダメだ」

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作者名:武蔵野 三歩止(ムサシノ ミホト) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年7月1日 16時

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