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☆★☆
疑問をぶつけてみると、一瞬目を見開いたAちゃん
だけどそれも一瞬で、ニコリと笑った
「坂田くんって時々鋭いよね。びっくりしちゃった」
嫌味の含まれていない純粋な感想だった
まるで子供のように肩をすくめてみせるAちゃん
これが本当の彼女なのだろうか
考えたって俺にはわからない
「ねぇ、坂田くんの目に私はどう映ってるの？」
「……え？どうって……」
「ちゃんと人に見えてるかな？私はちゃんと人でいれてるかな？ 」
「……A、ちゃん……？」
予想外の返答に言葉が詰まる
下手なことは言えない気がした
黙りこくる俺をよそに彼女は口を開く
その瞳はまさしく空虚で、まるで魂の抜けた人形みたいで…
やっぱりどこか気味が悪かった
「私ね、空っぽなんだ。個性なんてなにもない白色。それが私。変な奴だって笑ってくれていいよ。私も自分のこと嗤うから」
平坦な声でそういうAちゃん
笑えんよ……嗤わんでよ……
どうして笑えんの、どうして嗤えんの
俺には笑えないことだし、Aちゃん自身にも自分のことそうやって嗤わんで欲しい
「あのね、私は人でなくていいの。個性も色もなくていいの。
ミルクパズルって知ってる？ただただ真っ白で模様なんて一切ないパズルなんだけどね。私はそうなりたいの。そうでありたいの」
「それで……Aちゃんは幸せなん？誰かのピースになるのが、Aちゃんの……」
「うん。…誰かの隙間を埋める存在。何色にでも染まる存在。それが私の幸せなんだ」
虚ろな瞳を細め、そう言ったAちゃん
空っぽなんだ……
ありのままの彼女はこんなにも空っぽなんだ……
でもどうして……
「どうして俺に教えてくれたん？ずっと隠してきたんやろ…？」
「隠してたわけじゃないよ。坂田くんが誰も気づかなかったことに気づいただけ。だから教えてあげたの」
「Aちゃん……」
「だから……もう私を気味悪そうな目で見ないで……」
それは弱々しい声だった……
年相応の弱った女の子の声だった……
そうよな……空っぽなわけないよな……
いくら自分は誰かのピースになりたいと言っても、彼女は人間だ
傷つかないわけがないんや……
この世界の片隅で、
自分を消そうとする女の子のお話―――
優しくしないでください。【そらる】→←ミルクパズル【となりの坂田】
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作者名：武蔵野 三歩止（ﾑｻｼﾉ ﾐﾎﾄ） | 作者ホームページ：なし
作成日時：2019年7月1日 16時
