【リレー小説】この無慈悲な世界に能力で希望を【第四章】 (ページ26)

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治療【瀬戸内帝華/蓮@雫3318】ページ26

泣き止んで朝食を食べた後、制服に着替えた。
アップルパイを天秋に届けようとした。
届けようとした…のに、
「…え…」
カタカタと足が、手が震えてドアノブを掴めない。
呼吸が荒くなる。視界が滲む。
堪らず私は崩れ落ちた。ハッハッっと荒い呼吸しか出来ないが、意を決してドアを開ける。
「天秋、朝食を持ってきたよ」
「…帝…華?」
痛々しい天秋を見ながら病状を聞く。
「天秋…目は?」
「…見えない」
其処からも色々聞いたが両目の極度の衰弱と疲労以外の異常は見つからなかった。
「…目、ねぇ…」
少し思案しながら仕方ない、と能力を使う。けど、
「やめて…」
天秋が呟いた。…裁きを受けたとでも思っているのか。
「…天秋、死にたがる人が受けなきゃいけない最大の裁きは、何だと思う?」
「…わから、ない。」
「…生きること。私は一回死んでいて、また生き返ったの。天秋もそれくらいしないと…。まあ、不老不死だし、天使の加護付いてるし、諦めた方が良いよ。」
「…帝華、生きてて良かったと、思ったことある…?」
「…やっぱり、天秋は私に勝てないよ。」
その問に答えず、能力で失明している両目を癒す。天秋が冴え渡る視界で一番に入ったモノを見て、眼を見開いた。
「…馬鹿ッ…!」
私の顔はぐしゃぐしゃで、不細工だった。
ポロポロと出てくる涙を必死に止めようとして、いても無理だった。
天秋が頬に、触れた。
優しく包み込むように、もう離さないとでも言いたげに、私はその片手を両手で包んで、幸せな時間を過ごしていた。
後ろに誰か居ると気付いて、目線で釘を指す。
[瀬戸内帝華能力者番号、000、測定不可]
「厄介…この中で一番敵に回してはいけないな…瀬戸内帝華。更に、気配を消していたのに気付かれた。相当の手練れだ。…覚悟しろ、瀬戸内帝華」

「お前の首を取る。」