【リレー小説】この無慈悲な世界に能力で希望を【第二章】 (ページ26)

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護らなきゃ。【叶胡天秋/天秋】ページ26

夢を見てた。

お母さんに、何度も何度も殴られる夢。

あれ…。これは、走馬灯かな…？

『あんたなんて消えればいい！

どうして帝華を守れなかったの！

あんたが代わりに居なくなれば良かった！

帝華を返せ！この人殺し！』

あぁ。

帝華さんとわたしが、まだ、

姉妹だった頃。

草原で二人で遊んでいたら、いつの間にか帝華さんは連れ去られていた。

草達に聞いて、連れ去った人を追いかけたけど

帝華さんは、取り戻せなかった。

わたしが、全部悪い。

帝華さん…帝華は、何も悪くない。

今こうして、能力を人を傷つけるために使ってしまうのもわたしのせい。

わたしが、あの時守れていたら。

記憶を無くすこともなく、ずっとあの優しい帝華だったかもしれない。

ぼんやり目を覚ました。

すると、赤いフードのついたコートを羽織った人…確か、無黒さんが、帝華をずるずると引っ張ってっていた。

けど帝華は、すぐに目を覚まして無黒さんの手から逃れる。

その後は…

「待て！」

無黒さんが、制止の声を上げる。

けれど、帝華は止まらない。

全てが、スローモーションに見えていた。

帝華は、自分にウイルスを注ぎ込んだ。

致死量。それも強力な。

そして、川に身を投げた。

そこで体が瞬間的に動く。

「帝華！」

無黒さんには、外の対処を頼みたい。

きっと皆、帝華にウイルスを打ち込まれたところで記憶が止まってるから。

帝華が今どんな状態か、皆に伝えておいてほしい。

駆けてこようとする無黒さんに、大丈夫だと目で言って、わたしも川へ飛び込んだ。

冷たい。深い。

底の方にいる帝華を見つけた。

ぐいと引き上げて、岸まで泳ぐ。

わたしの体が持つか心配だけど、そんなこと考える余裕もない。

「ぷはっ…はぁ…はぁ…」

岸についたら帝華を寝かせて

“花と蝶々戯れ癒最”

残った体力を全部使う勢いで、帝華のウイルスを中和した。

残念ながら、中和の方法はひとつだけ。

「中和対象を自分の中に移しながら、能力を使う」

こと。

「無黒さん、後は頼みます…」

いつの間にかそばにいた無黒さんに、帝華を託した。