【リレー小説】この無慈悲な世界に能力で希望を【第二章】 (ページ50)

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穢らわしい【倖月儚羽/アカツキ@VII】ページ50

黒服達は追い返したが、まだ終わらないようだ。
人形遣い。
オークションの中でも特に悪質で権力を持つ集団が動き出したらしい。そう言った少女の様子を見るに、彼女は其処に捕らわれた経験があるのだろう。
手を出さないで欲しい、と別の少女に頼まれ、疑問には思ったが、仕方無く離れた。彼女は短刀で戦い始めた。念の為、いつでも助けられるように監視用の鳥を上空に待機させておいた。
ウイルス遣いはまた別の所に行ったようだった。彼女にも監視鳥をつけた。

(俺は、何をすべきだ……？どうせ、何をしようと終わりはしないのに……)

大樹の傍に戻り、目を閉じて戦闘の音を聴く。地の揺れる音。刃の交わる音。服のはためく音。呼吸音。
嗚呼、まだ、生きている。

「なあ、アンタ。アンタも能力者だろ？一緒に来てくれるよな？」

何者かが青年に訊ねた。青年が片目のみで見遣れば、また別のオークションのバイヤーのようだった。胡散臭い笑みを浮かべている。
忌まわしい。

「向こうでお仲間さんも大変みたいだけど、アンタは行かないんだなー。いや、責めてなんて無いんだぜ？良い判断だよ。どうせ適いやしないんだからさ」

穢らわしい。

「ほら、大人しくしてくれたら、なーんも痛くしな」

「この世のオークション全てを壊し尽くせそれが完了するまで自傷及びそれに準ずる行為を禁ずる尚この洗脳は対象が発した声を聞いた者にも有効とする但し能力者には効力を発揮しないものとする。以上、去れ」

一息で言い切る。
バイヤーは洗脳された証の虚ろな目になり、何処かへ去る。

(壊し尽くさないと。オークションなんてものがあるから、能力者は永遠に戦乱の中に身を投じる羽目になる)

青年は大樹から離れ駆け出す。街に入り、周囲の不審な目を無視しながら、大通り沿いの公園に立つ。
忌まわしい、穢らわしい。能力者を穢さんとする悪人共め。
すぅ、と息を深く吸い込み、全ての人々に届かせるように声を出す。

「能力者を狙うオークション全てを潰せ！方法は問わない、ありとあらゆる手段を用いて徹底的に破壊しろ！命令完遂、或いは死亡するまで能力解除はされない！尚、オークションに襲われている能力者を発見した場合は即座に助力すること！この洗脳は対象の声を聞いた者にも有効とする！但し能力者には無効！以上、散開！」

公園内、または周辺にいた人々は、皆虚ろな目で走り出す。
青年は公園のベンチに腰を下ろして、重い頭を抱えてうずくまった。