【リレー小説】この無慈悲な世界に能力で希望を【第二章】 (ページ35)

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いつの間にか【倖月儚羽/アカツキ@VII】ページ35

木の幹に背を預けているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。眠気があったのは確かだから、仕方がないと思うことにする。
しかし、これは一体どういう状況だろうか。
数人の能力者が臨戦態勢で森の方を睨んでいる。彼女らの目の先にいるのは、黒服の男達。恐らくはオークションの売人。
嗚呼、腹が立つ。
ウイルス遣いと同じ、白髪にオッドアイの少女が他の者達を何処かへ連れて行こうとする。安全な所なのだろうが……オークションを目の前にしてのこのこ安全な場所で待っていろと？

「俺は連れて行くな。他の人達だけ連れて行け」

能力を込めて言う。少女は心做しか虚ろな目になり、青年を素通りして他の者達を連れていく。
ウイルス遣いを見遣れば、背後に蝶を漂わせて黒服達を見て笑っている。あの蝶はウイルス製だろうか。見た目に反しておぞましいものだ。
穏便に済ませれば良いのに。何故こうも世界は戦火を好むのか。

「アンタら暴力的過ぎ。ソイツらを害すれば能力者はもっと迫害される。今後を一切考えない短絡的な行動は自分の首を絞めるぞ」

青年が残っているとは思わなかったのか、彼女らはこちらを見て目を丸くする。
青年は黒服達を見遣って溜息をつく。

「どうせだから、俺の能力見せるよ。これでお披露目って事で」

「ちょっと、貴方何勝手に……」

ウイルス遣いが何か言おうとしていたが無視する。

「そこの黒服共。全員、能力者とそれに関する情報全てを忘却し、自分達の拠点及び能力者にとっての害になる者を排除しろ。命令完遂までこの能力解除はされない。完遂、または死亡した時点で能力は解除とする。……行け」

告げれば、黒服達は皆虚ろな目になり、ふらふらと何処かへ去っていく。彼らの拠点へと帰るのだろう。洗脳通りに。
勝手に自滅すれば良い。馬鹿は馬鹿らしく、馬鹿同士でやり合ってくれ。