Angel of Death【雷堂メラ】

21話　お腹が空いたので ページ25

…カーテンは開いたものの……
開いた主は、喋りもせず、動きもせず、ひたすら固まっている。
きっとココからどうすればいいのかわからないのだろう。
心配ない。こちとらわからないから。
釣られて、私も固まる。

張り詰めた空気の中、数秒が経った。



「…あ…」



思い出した。
前、ぶつかった人…。
特徴ある髪で確信がついた。
彼は私の事を覚えているのだろうか。
刹那、彼と違った所から声がした。
彼と話してた、もう一人の…先生?



「あら、お目覚め?どこか痛い所ないかしら?」



いや…まぁ…全身がなんとなく痛いけど…
慣れた物だ。
包帯やら湿布やら色々体に貼って巻いてされてたが、首を横に振った。
先生らしき女の人は『そう…』と言ってまた椅子に座る。

途端に、お腹の虫が鳴った。
朝、昼と何も食べてないもの。
さすがにお腹も限界を迎え、怒っている様だ。
こんな状況の中、自分一人が緩んでいるのも悪いと思うが、どうしようもないことだ。
生理的欲求で、人間の生きていく為の本能なのだから。



「あらあら…二人で何か食べてらっしゃい?こんなに広いもの。きっと迷子になるわ。
雷堂君も走り回って小腹空いたんじゃないの?」

「ま、まぁ……立てるか?」



ちょっと間を置き、コクンと頷く。
そして、ゆっくりとベッドから足を下ろした。
ずっと寝転んでいたからか、体がふらつく。
まぁ…大したことはないが。

これも…慣れ……なのか…？



『雷堂君』と呼ばれていた人に着いていくと、よく分からない所に出た。
学校の様な…街の様な…兎に角広い。
あの先生?が迷子になるって言っていたのも分かる気がする。
こんなに広いんだもの、一人や二人は行方不明者居るんじゃ…?

ちょっとだけ外に出ると、動く屋台…車のバックドアを開いた簡易な屋台があった。
彼は「そこでいっか」と呟き、そこから焼きそばパンを二つ持ってきた。


「腹減ってんだろ?食えよ」

「……お金…」

「んなもんいらねぇよ」


前回会った時といい、今回会った時といい…結構優しいようだ。
こんな見ず知らずの奴にこんなに接してくれるなんて早々思わなかった。
まぁ…人との関わりが少ないからそう思っちゃうのか…?

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