第12話 髪 ページ15
晴「おい、A」
『…何ですか？』
普段晴明様は、私のことを「お前」、たま〜に名前で呼んでくれる…が、ほとんどない
この半年以上の間で名前を呼んでくれたのは数えるくらいだ
晴「お前はまだまだ半人前だが、経験も必要だ。次、私のお役目に付き合え」
『…え』
陰陽師は現代でいう公務員だ。
昔の人の名前が残っているのは、本名を出さざるを得ないからだ。
女の人が「○○の娘」や、女房の紫式部など、親の役職付きで呼ばれることがあるが、本当の名前では呼ばれない。
天皇の妻は公務員のような立場だから、名前が公表されていると高校の先生が雑談で言っていた。
この時代の女の人は、仕事があるとするなら女房とかの宮仕えが考えられるが、陰陽師として、しかも女として仕事をするなんてできるのか？
『あの、女がお役目を務めるのが可能だとは思いませんが』
晴「男として行け」
『そうなりますよね…それで誤魔化せるとは思いませんが』
晴「とにかく髪を切れ。長髪の奴もいるが、お前は小さいに加え、女らしい体だからな。女にこんなことを言うのはすまないが、少し切ったほうがまだ誤魔化せる」
そういえば女の人が髪を切るのは出家するときだっけ
晴明様は髪を切ってしまわなければならないことをすまない、と言ってくれているのかな
たまに見る晴明様のやさしさ
『わかりました、切ります。どこまで切ればいいですか』
晴「！…そうか、すまないな。如月に切ってもらえ。腰まであるから、肩よりも少し長めでいいだろう」
『わかりました、如月』
如「はい」
『お願い』
如「…よろしいんですか、出家なさるわけでもありませんのに」
『いいの、そうしなきゃいけないんだから』
如「……御意」
そういった如月は髪を切ってくれた
チョキ…チョキ…と髪を切る音だけが屋敷の中に響いている
私と如月の後ろで、背を向けて屋敷の外を眺めている晴明様は何を思っているんだろう
普段冷たい鬼が髪を切ってほしいと、悲しそうに言った
全然表情を顔に出さない晴明様が、切りますと言った私を見て目を見開いた
本当に、心から驚いた表情と、その後の悲しそうな顔はちょっと意外だった
現代では切るなんて当たり前だし、なんとも思わないけど、如月もだけどこの時代の人たちからしたら、ほんとに一大事なのかも
『…私がいた時代は』
晴「！……」
『髪を切ることは当たり前でした』
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コノハナ(プロフ) - 佝僂さん、コメントありがとうございます！応援して頂いて嬉しいです！できるだけ頻繁に更新していくので待っていてください(笑) (2021年6月27日 12時) (
レス) id: df4109551a (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - 初コメ失礼します！この作品に一目惚れしました(照)とても面白いので、いつまでも更新まってます！！無理しない程度にこれからも頑張ってください！ (2021年6月27日 8時) (レス) id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コノハナ | 作成日時：2021年5月12日 13時
