1582@青×緑 (ページ5)

今日:8 hit、昨日:7 hit、合計:15,211 hit

・ページ5

「ずっと家無いんか？」

「いえ、ありました。」

「じゃあ、」

「家は、税が払えんくて、追い出されたんです。」

この国は平民に対してそこまで税は求めてない。

でも、国を動かすにはそれなりの収入が必要になる。

その大部分を平民への税で賄っている国は少なくない。

「それで、隣の国やったら、もっと僕らみたいな農民にも優しいって聞いて。こっちにみんなで来ようって言ってたんです。」

同時に、そうやってこの国へ移り住んでくる平民も少なくない。

それがまた、この国が平民へ税を求めなくてよくなる理由にもなっていたりする。

「でも、その前に戦があって。・・・僕だけしか、残りませんでした。」

ついこの間、隣の国は少し離れた国に持ち掛けられた戦に敗れた。

戦場となった場所は、悲惨という言葉以上の状態やったと聞く。

でもそれは、この国はもちろん、どの国とも隣り合わせになっている危険でもある。

「せめて、僕だけでもこっちに来ようと思ったんです。でも、人買いに見つかって。」

人買い、というのは身寄りのない子を金持ちに奴隷として大金で売り払う、この世で最も汚い商売のこと。

もちろん、この国では禁止されている。

さっきの2人組はそういうことやったんか。

「何とかして逃げなきゃって思って、この国に入ってから目を盗んで逃げたんです。やのにすぐ見つかっちゃって。」

で、今の状態やった、と。

「やから、僕にはもう帰る家がないんです。どうか、お城に僕を置いてください！」

「そう言われてもなぁ・・・」

どれだけ話を聞いても、この場で俺がいいよ、と言えるわけじゃない。

それは変わらん。

今すぐ城に連絡する手段でもあれば話は別やけど、そんな手段はない。

どうしようかと悩んでいると、表の通りからいつもの顔が現れた。