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「大丈夫。何も、ないから。」


僕の頭をなでて小さく呟かれた言葉。

でも、僕は見ていました。

反対の手は、ご自分の胸に当てられているところを。

その胸に手を当て、何を想われていたのですか?

素直に、そんなことを聞く勇気はありませんでした。

もし、そんなことを聞いて嫌われてしまったら。

あなたから見放されてしまったら。


そんな考えが少し頭を過った瞬間、恐怖が心を支配したのです。

自分勝手であるのは十分承知しています。

でも、僕はあなたに嫌われたくありません。

見放されたくありません。

少し前であれば、そんな気持ちは起こらなかったでしょう。

1人ぼっちやったから。


でも、あなたの温もりを知ってしまった今、再び1人ぼっちになるなんて耐えられません。


「とも、聞けたか?」


優しく聞いてくださる照史様も。


「なんか、わかったんか?」


本気で心配されている淳太様も。


お2人とも、あなたがいるからこそ、こうして僕に接して下さっています。

あなたがいなければ、僕はこのお2人の温もりさえも失うことになるのです。

そんな大切なものを失うのなら、今は何も聞かなかったことにした方がよいに違いない。

そう思ってしまった僕は、あなたの隣に立つ者として失格なのでしょうか?


「とも?」


優しく声をかけてくださったお2人から、目線をそらしました。

下を向いて、唇を噛みしめます。

僕は、何も言いませんでした。


「そうか、アカンかったか。」

「ありがとうな?」


僕は、何も言ってません。

肯定も否定もしていません。

これは、騙しているとは言いません。

言わないでください。


僕には、これ以外どうすることもできなかったのですから。

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作者名:roma-tan | 作成日時:2017年11月23日 22時

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