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父上は、戦をしないこと。

それを第1に考え、国を動かしてこられた。

でも、こんな状況に陥っている今、そんなことを考えてる場合じゃない。

戦をせずに、この国を亡ぼすか。

戦を仕掛けて、この国を存続させるか。

事態はそんなところにまでやってきている。


ほんまは、たぶん、みんな気づいてるねん。

戦のない世を創るためには、戦をしなければらならい、ということに。

兵士も、家臣も、たぶん、父上も。

血で血を洗うようなこの時代に、戦のない世界を、なんて夢物語でしかない。

それはただの欲望として、人々の夢となり、突き進んでいる。

現実はそうじゃない。

戦のない世界に生きるためには、自らをまず守らないといけない。

自らを守るためなら、何を殺すこともいつわない心が必要。

今は、そんな時代やと思う。


ん?俺?

昔はこんなこと考えもせんかってんけどな。

今や、そんな心以上に非人道的になってもうてるわ。



「流星様、その傷・・・!」

「大丈夫や、こんくらい。ほかのヤツらの手当したれ。」


戦に出て、もう数回経っていた。

初めて、敵に体を傷つけられた。

生まれて初めての、感じたことのないような痛みが体を走った。

でも、それは敵の血を浴びた途端に快感に変わって、癒えていった。


その快感が忘れられへんかった。

傷を癒すそのクスリは、どんな良薬よりも気持ちよかった。

身体が痺れるような、快感。

人の血を浴びることで、こんなことになるなんて想像もしてへんかった。


それ以降、刀は戦を重ねる度に濃い朱色に染まっていった。

もう息の根が絶えそうな淡い魂も、わざとその血を浴びるように斬りつけ、消していく。

苦しんでるところを斬りつけるのは、少し心が痛んだけど、それ以上にこの快感の方が強くて。

血を浴びることが、気持ちよくて仕方なかった。


分かってるよ。

もう元の生活には戻れへんことくらい。

とっくの昔に気づいてる。

でもな、しゃあないねん。

俺にはこの刀が、流れる敵の血で染まれと思ってしまう心を止める術なんてないから。

それどころか、もっと、もっとと求めてしまう自分までいる。


戦。

それは、俺の中の何かを大きく狂わせてしまったもの。


もう2度と、元には戻れないほどに。



大きく狂わせた。




大きく狂わせて、






壊していった。

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作者名:roma-tan | 作成日時:2017年11月23日 22時

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