19話 神宮寺side ページ19
昔の夢を見ていた。
小さな机を岸のお母さん、岸のお父さん、実優ちゃん、俺、岸で囲んでいる。
みんな楽しそうに喋りながらご飯を食べている。昔はよく見た光景だ。
でも岸のお父さんが交通事故で亡くなったことをきっかけに岸の家は貧乏になってしまった。岸のお母さんは変わらずに俺の夕食を作ってくれていた。でも迷惑をかけていることが分からない歳じゃない。
気付けば俺は、岸のお母さんを避けるようなっていた。それでも岸と宇宙飛行士の夢を掲げていた。
自分たちが賢くないことは2人ともよく分かっていた。宇宙飛行士が賢くなきゃなれないことも知っていた。
それを踏まえてでも俺らは夢を見続けていた。
でも中学に入ってから、俺と岸の成績の差が明らかに浮き出てきた。決して俺と変わらないぐらいの成績だった岸が俺よりもテストの点数を30点も下回っていた。
きっとそれは、家族を養うために学校の校則を破り、バイトをしていたからだろう。
岸のお父さんはある程度貯金をしてくれていたらしいが、それだけで一生生活ができるわけじゃない。いつかお金は尽きる。
それを防ぐために岸はバイトをしていた。中学生がバイトをできる所なんて限りがある。それでも岸がいくつもバイトできていたのは、年齢を偽っていたから。
テスト前も実優ちゃんの世話や、夜遅くまで働く母親の代わりに家事を行っていたから勉強なんて出来なかった。
それが続き、中学一年生三学期の成績はなんとオール1。しかもバイトをしている事が学校にバレて2ヶ月の停学処分が下された。
俺も岸に勉強を教えたりしていたが、だんだん教えるのが億劫になってきた。どれだけ教えても岸の点数は一向に良くならない。
それなら教えても無駄なんじゃないかという思いが芽生えてきたのはいつだっか。岸に勉強を教えてくれと頼まれても、「忙しいから」と言って何度も断った。
そんなことをしたから、彼は俺と一緒に夢を見てくれなくなったのだろう。
自業自得だ。彼が大変なことぐらい一番理解していたはずなのに、俺は彼を助けなかった。
そう考えると、岸がかつて共に見ていた夢を馬鹿にしたのも仕方がないことなのかもしれない。
50人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜(プロフ) - ましゅまろん。さん» 誤字を教えてくださり、ありがとうございます!これからも頑張って更新しますので、最後までどうかお付き合い下さい。 (2020年4月30日 13時) (レス) id: 842a00e709 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろん。(プロフ) - 突然すみません、43話なのですが、「いんげん」ではなく「いわげん」ではないでしょうか?お話、とても引き込まれる内容で楽しく読ませていただいています。更新、頑張ってください (2020年4月30日 11時) (レス) id: 22f8763a4a (このIDを非表示/違反報告)
みあ(プロフ) - 読み始めてからすぐにお話の世界に入っているような感じになる、素敵なお話でした (2020年1月28日 0時) (レス) id: 985d7c4caa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜 | 作成日時:2019年12月22日 12時