十三 ページ13
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「そうですか。ご協力ありがとうございました」
頭を下げ、その場を後にする。
朝から一軒一軒回っていたはずが、もう昼過ぎだ。
情けないぐうという音が腹から鳴った。
「A」
声を掛けられ、振り向けば思わず笑顔になる。
「沖田さん…!」
「ああ。めんどくさ。犬にみてえな目で見やがって」
心底嫌なものを見るような目で男はAを一瞥した。
つかつかと歩いてきて、ぐっと物を押し付ける。
袋の中にはAが現場にいた頃に着ていた警護服と武器。
「あいつが持ってこいって」
そう言い、遠くに見える土方のほうに向けて顎を突き上げる。
昨晩、彼は言った。
『Aがこの仕事が好きなのはよく知っているし、今の仕事で思うところがあるって話は重々聞いてきた。
だから、今回の一件。
十分にお前の力を発揮してほしい。
だが。
それが終わったら、少しはお前の時間をくれたっていいだろ』
「…おい。早く受け取れ」
「すみません。ありがとうございます、お忙しいのに」
「ったく…。土方さんは相変わらず人遣いが荒えや…Aから言っといてくれい」
沖田は土方の姿だけを確認して、本当に荷物を渡すだけの用事できたようだった。
上司命令に逆らうことなく、面倒臭がりながらもこうやってやってくる沖田は心の内では土方を尊敬しているのだろうと改めて感じていた。
沖田が持ってきた服に着替え、土方に近づく。
彼はAを見て、満足そうにふんと鼻を鳴らした後、何事もなかったかのように概要について語り始める。
何も触れずに話すあたりが彼らしい。
どこか胸の奥が熱くなるような、きゅっと閉まるような気がした。
そんな時だ。
「…あっ。すみません」
唐突になる軽快な音。
その音のほうへと土方の視線も向く。
画面を確認すれば、現在の直属の上司の名前。
思わず溜息を零しそうになったが、それをこらえ電話に出る。
「お。出た出た」
こっちの様子はニュースで話題が持ち切りになるほどに逼迫しているのが分かるはずなのに、彼は呑気な声で話しかけた。
「悪いんだけどさ、あの書類どこにあるっけ」
(それ自分の仕事だし、わざわざ電話することでもないじゃない)
そう腹を立てながら冷静に返そうとした時、
「今、Aはこっち所属だ。
他のもんに頼め」
土方は無理矢理に電話を奪って切り、してやったりという顔で携帯電話を突き付けた。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時