雨降る夜に待ち合わせを【桃】 (ページ48)

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「私、小瀧くんに言いたいことあるのー」
　
　
『なになに？』
　
　
　
見る限りAちゃんは相当酔っ払ってる
　
　
明らかにいつもの感じじゃ無い
　
　
俺らが来る全然前からここで呑んでるらしいから無理もないか
　
　

「あのね、私さー・・・」
　
　
　
何を言われんねやろと構えてたら、
　
　
急に俺の手を掴んで真っ直ぐな瞳でこっちを見つめる
　
　
その瞳は段々と潤み始めた
　

　
『ちょ、なになに？！どしたんって』
　
　
　
焦る俺を無視して続ける
　
　
　
「あのね、私、小瀧くんとは友達になれない」
　
　
『え？』
　
　
　
突然の告白に俺もあとの2人も驚いて目を見合わせた
　
　
　
『えっとー、それは、なんで？』
　
　
「だって辛いんだもん」
　
　
『何が辛いねん』
　
　
「住む世界が違いすぎるの」

　
『そんなこと関係ないやろ』
　
　
「私には関係あるの！」
　
　
　
Aちゃんは至って真剣な眼差しで主張する
　
　
　
「だから友達はやめる」
　
　
『そんなん、俺らまだこれからやん、まだ何も友達らしいことしてへんのに』
　
　
「これ以上友達やってると私、抑えが効かなくなるの」
　
　
『抑え？』
　
　
「小瀧くんはファンの人たちみんなの小瀧くんなの、だから偶然会って知り合っただけの私がこんなに近くで独り占めしてちゃダメなんだよ、」
　
　
　
正直、どう言ってあげたらいいのか全然分からんかった
　
　
たしかに、アイドル小瀧望はファンの皆さんの支えがあって成り立ってる
　
　
そこを否定する気は無いし、そんな失礼なことはできひん
　
　
でも俺も1人の人間やから、恋だってするし、友達だって作りたい
　
　
それが芸能人でも一般人でも男でも女でも関係ない
　
　

　
彼女は律儀で人の為を考える人やからこそ悩んでたんかもしらん
　
　
俺のことを知って尚更考えてしまったんかもしらん
　
　
これ以上わがままを言えば、もっと苦しめてまうかもしらん
　
　
それでもごめんな、俺は嫌やねん
　
　
君を近くに感じてたいねん
　
　
　
　
「だから、」
　
　
『嫌や』
　
　
　

俯いて俺の手を握る彼女の力が弱まった
　
　
　
　
『俺は、Aちゃんが好きやねん』