雨降る夜に待ち合わせを【桃】 (ページ19)

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彼女は続けた

　
　
「これ、長い間借りてしまってすみませんでした、ありがとうございました」
　
　
　
それとこれというと傘と一緒に小さな紙袋を差し出し来た
　
　
　
『なんですか、これ』
　
　
　
「プリンです、小瀧さん好きなのかなって」
　
　
　
初めてあった日のことを覚えていたらしく用意してくれたんだと
　
　
　
説明しながら俯く彼女の耳は赤くなっていた
　
　
　
　
　
『かわいい』
　
　
　
「えっ」
　
　
『えっ』
　
　
　
「いや、なんでもないです、あ！そろそろ私帰りますね
　傘本当にありがとうございました」
　
　
　
『えっ、ちょ』
　
　
　
　
　
彼女の去り際、つい腕を掴んでしまった
　
　
　
　
「あ、すみません」
　
　
　
無意識のうちに掴んだ手を離す
　
　
　
　
　
　
　
「あっ」
　
　
気まずい沈黙を遮るように雨がパラパラ落ちて来た
　
　
　
　
　
『雨や』
　
　
　
「嘘でしょ、」
　
　
　
　
見るからに彼女は傘を持っていない
　
　
　
　
　
チャンスだと思った
　
　
　
　
　
『神田さん、よかったら入っていきませんか？送ります』
　
　
　
　