−２４９− ページ39
そんなの、かなうはずない。
溜息の後に彼がそう言った。
かなうはずない。敵うはずない…？誰に？え？叶うはずない。あ、こっちか。……何で？
俯いたまま頭の中で変換してから、どうして叶うはずないなんて言うんだろう。何かあったのかな？そっか、何かあったから今ここにいるんだ。
そう解釈をして顔を上げると、空いてる方の手で彼の二の腕を掴んだ。
「何で？何があったの？何か起きたの？ねぇ、こんなとこで私と話してる場合じゃないんじゃないの？」
矢継ぎ早に質問すると、また盛大に溜息をついた彼がゴツンと私の頭に自分の額をぶつけてくる。
「痛っ！……何？？」
翔「何、何、何で、どうして…ってうるさいよ。他にもっとない？俺に言いたい事。言わなきゃなんない事。…ない？」
額をくっつけたままの体制で、至近距離の彼の目が私を探る様に見つめてくる。
彼のその何でも見通してしまいそうな瞳に、堪らず目を伏せた。
そりゃ、ない訳じゃない。
だけどそれを言った所で自分が苦しくなるだけだし、どうにもならないでしょ？
そう思ってしまう私は、卑屈だと思う。自分が傷付きたくないだけの、弱い人間だとも思う。
だけど、じゃあどうすればいいのよ。
わかんない。わかんない…。
「…わかんない。」
今思った事だけが口から溢れる様に出てきて、自分でも流石に呆れてしまう。
何だかこの一瞬で妙な疲労感に襲われて、掴んでた彼の腕を解放して体を一歩後退させた。
そのままどんどん下がって行きそうな頭を、彼の両手が私の頬を包み、自分から目を逸らすなと言わんばかりに、無理矢理視界に入ってくる。
「は…なして…。」
翔「やだ。ちゃんと俺を見て。」
「……見てるよ。」
翔「本当に見えてる？」
「どういう、意味…？」
翔「わかんないなら、俺が教えてやろうか？」
え？って言葉は、唇を突然塞がれたせいで彼に飲み込まれてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2155人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リュリュ(プロフ) - 紺さん» 紺さん☆大変遅ればせながら、感謝申し上げます…。この度復活いたしまして、コメント頂いてた事に気付きました。読んで下さってありがとうございました！ (2018年5月27日 17時) (
レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
紺 - 遅ればせながらですが、このお話の翔くんがたまらなく好きで、どんどん引き込まれて睡眠不足になりながら読みました！物語の終盤、2人が別れるところでは号泣でした。なので、ハッピーエンドを迎えられて心から幸せな気持ちになりました。本当に素敵なカップルでした。 (2017年8月26日 3時) (レス) id: b647eaf90d (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - みんとさん» みんとさん！この度は最初からの一気読み！お時間を割いて頂き嬉しい限りです…。心打たれたなんて…そう言って貰えて、今私が心打たれてます。本当に最後までありがとうございました！またお会いできます様に。 (2017年1月13日 15時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - よしみなさん» よしみなさん☆お返事遅くなりました^^;最後までお付き合い頂きありがとうございました！この二人、本当にヤキモキしましたが、最後は安定のハッピーエンド。好きと言って貰えてとても幸せです。またお会いできる日を楽しみにしています！ありがとうございました！ (2017年1月13日 15時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
みんと(プロフ) - 完結、お疲れ様でした！最初から一気に読んでしまいました(*´-`)リュリュさんの表現、1つ1つに心打たれてしまいました。キュンキュンしたり、もやもやしたりすっごく素敵なお話でした！出会えたことに感謝、です！これからも応援しています！！ (2017年1月13日 13時) (レス) id: 1d326bcbac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リュリュ
| 作成日時：2016年11月3日 1時
