おとなりさん【熊谷みつ夫】 (ページ19)

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『…』

「A～！おーい！」

『…』

「ちょっと～！」

ぼーっと上の空になっていると
詩ちゃんが私の目の前にいることに気づいた

「もしかして…くまおくんとなんかあった？」

その言葉で昨夜のことを思い出し

一気に顔が赤くなってしまう

「まさか…せっ」

「Aちょっと来て」

『あ、う、うん！』

詩ちゃんに勘ぐられそうになったが

丁度裏道が呼んでくれたため逃げることが出来た

「え、なに、なんかあった？」

『え？』

裏道は私の頬に手を添え

少し口元を緩めた

「めっちゃにやけてるじゃん」

昨日の熊谷のカッコいいところと言い
タメ口といい。

尊い。

『いい事があってさ、じつは』
「なにやってんすか」

後ろから私を引き寄せ裏道から引き剥がしたのは

紛れもなく片手にくまおくんの頭を持った熊谷だった

「熊谷ずっとこいつにやけてるから何とかして」

「…？なんかあったの」

不意なタメ口に少し動揺してしまう
私はとっさに朝から機嫌がいいだけだと答える

「あ、裏道さん。さっき出木田さんが読んでましたよ。新しい企画がなんたらみたいな」

裏道は面倒くさそうな顔を全面的にだしつつ
とぼとぼと重そうな足を進めていった

「…昨日の事でふわふわするのもいいですけどあんま油断してたら許しませんよ。」

「なっ別にふわふわしてないし」

といいつつもやはり頬が緩んでしまう

そろそろ収録の時間のため熊谷と二人で撮影所まで向かった。