26 ページ27
私は義勇さんがその消滅していく鬼の亡骸を眺めている隙に空へと登り、先程山陰に隠した主人を、里の入り口付近に運んだ。
人の姿に戻り、彼をそっと揺り起こした。
「＿…ゔ、ぅ……君は、さっきの…！？
ここは、ここはどこだ？他の者は？！」
周りを見回し、彼は混乱していた。
「鬼から逃すために私が連れてきたのです。
…落ち着いて聞いて下さいね。」
「…わ、わかった。それで…あの女は？」
「ええ。あの女は鬼でした。」
「やはり！」
「ですが私が足止めしていた所に、鬼狩りが彼女を倒してくれたのです。今のところは幸い怪我人も出ず、皆助かりました。」
「！そうか。そうでしたか！…それは、、それは良かった。」
主人は心底、安心した様子で何度も頷いた。
「…しかし、ですね。」
「しかし？」
「あなたは稀血という極小数しかいない、鬼に狙われやすい特別な血です。」
「そんな…」
「ですが、きっと屋敷に戻れば、鬼殺隊の者が鬼に狙われないように対処してくれるはずです。」
「わかりました…ありがとうございます。
あの！貴女にも何かお礼をさせてください。」
「お礼なんて………いや、
では一つお願いを聞いてくださいますか？」
「あぁ！金でも、上等な着物でもなんでも…
「いえ、ただ一つだけ。奉公で来て鬼に食われた使用人の娘たちを…どうか弔ってやってください。」
「…もちろんだ。まかせてくれ。」
「ありがとうございます。
あぁ。もうすぐ夜が明けますね…」
そういって、私は黒龍の姿に変身した。
「…君も…人じゃないのか…」
呆然とする彼。
「私は…訳あって、龍神の姿を借りているのです。あ、そうでした。……髪飾りなんて嘘をついてごめんなさい。」
山と山の間から指す朝明けを目指して、空高く飛び上がる。
「では私はこれで。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：koumori666 | 作成日時：2020年4月25日 11時
