44話 ページ1
─探偵社 医務室前─
私は敦くんの隣で座り込んでいた。私はあの電車での出来事を思い出す。
もうこれ以上、一人だって殺したくない、そう言っていた時の鏡花ちゃんは、泣いていた。きっと本心だったのだろう。
遠目で彼女が敦くんを刺しているのを見た時、何というか遠目からでも無表情なのがよく分かった。何も感じてないみたいな、冷たい目。そんな目で敦くんを刺しまくっていた。
恐らく、異能力を使って。
「ねぇ敦くん。鏡花ちゃんは「もうこれ以上、一人だって殺したくない」って言っましたよね。
彼女は本当にやりたくてあんなことしてたのでしょうか。」
敦くんは首を横に振る。
「違う。鏡花ちゃんの異能力は電話の声だけに従ってた。多分自分の異能力を自分で制御できないんだよ。」
自分の異能力を、制御できない。
じゃあ彼女は利用されていたって事?
「そんなのって…」
酷い。でも、よく分かるや。
逆らえば、殺されるものね。
やれと言われたら、嫌でもなんでも、やるしかないものね。
私だって、そうだったもん…。
「また面倒を持ち帰ったな、小僧。」
声がした。顔を上げると、国木田さんがいた。国木田さんは、敦くんの方を見ながら言った。
「あれはもう手遅れだ。」
国木田さん曰く、鏡花ちゃんはこの界隈では名の通った暗殺者らしい。幼い容姿で相手を油断させ、敵対組織を潰すらしい。
あと、急速に戦果を上げすぎたらしい。
顔が知れて捕まるのは時間の問題だって。
そんなの、あんまりだ。確かに彼女は三十五人も殺してしまっている。自分の意思ではなく、人に利用されて。
人に利用されたとはいえ、三十五人も殺してしまった事実は変わらないから、きっと軍警に捕まれば間違いなく死罪だろう。
私だって、人をそれこそ三十五人よりも遥かに多く殺めてしまっている。転生ごときでその罪が全部晴れる訳じゃないのに。
私の中に罪はあるのに。
生きる世界が変わった。ただそれだけで鏡花ちゃんの様に狙われてないだけで。
「私だって鏡花ちゃん見たく色々やってきたのに…。」
小さく呟いた私の声は静かな廊下でも、隣にいた敦くんくらいにしか聞こえなかっただろう。
敦君が、え?と声を上げてこっちを見るけれど、無視した。
「悪いのは彼女の異能力を利用している奴なのに。」
「異能力がその当人を幸せにするとは限らん。お前なら知っているだろう。」
そう言って国木田さんは敦君を見た。その言葉を聞いて、敦君は俯いてしまった。
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あーちゃん(プロフ) - 78話のヒロイン達のお話の題名はどのような題名なのですか? (2019年6月12日 0時) (レス) id: 32e2eab4af (このIDを非表示/違反報告)
ましゅ麻呂(とよ)(プロフ) - 今更ですが、女医で、せんせいと読む事にしておいて下さい…。 (2019年3月1日 11時) (レス) id: 06dfc878d9 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅ麻呂(とよ)(プロフ) - 鼠ちんさん» なるほど…。今後夢主ちゃんに毒を使わせるときはそうさせていただきます!調べて頂き、ありがとうございます! (2019年2月26日 20時) (レス) id: 06dfc878d9 (このIDを非表示/違反報告)
鼠ちん(プロフ) - 調べました所トリカブトに含まれる毒性物質の致死量は2~6mgだそうで、トリカブトが4mgでもこれだけの量が含まれている事が多いのでそこまで薄めることは専用の機材でもない限り不可能かと思いますの体重1kgに対し0.3mgの鈴蘭はいかがです?いや猛毒には変わりないですが (2019年2月26日 20時) (レス) id: 1616c0402d (このIDを非表示/違反報告)
ましゅ麻呂(とよ)(プロフ) - 今回の様によく知らないくせに使ってる…みたいな所がございましたら、どうぞ現実的なツッコミをいれてくだされば…。 (2019年2月26日 17時) (レス) id: 06dfc878d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅ麻呂(とよ) | 作成日時:2019年2月22日 19時