【d！】この辟易した世界に終焉を。【短編集】 (ページ3)

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幸せ/ tn ページ3

「Aって、見れば見るほどほんま綺麗な顔をしとるよなぁ、」

「…はい？」

日も暮れた放課後、部活動を終えたのか、楽しそうな声と共にまばらではあるが帰宅を始めている。

そんな幸せそうな光景を横目で見つつ、明日の緊急総会の為の資料作りを続けようとした矢先、柘榴石のような紅く綺麗な瞳がAを捉え、普段生真面目な彼からは絶対出ないし、今の今まで1度も会話の中に出たこともないワーに、おもわず素っ頓狂な声を出してしまう。

「ふふ、その気の抜けたような声も可愛らしいなぁ。あ、あと、その戸惑ったような顔も全部可愛らしいわ…生徒会入っとってほんま良かったわ、俺このために生きとったんやろか…そうや、絶対そうや、ふふ、良かったわ…」

「と、トントン？」

「ん？なぁに？」

ふわふわとした返事に一瞬和み雰囲気にのまれそうになるが、ぶんぶんと頭をふり思考をリセットする。ちらっとトントンを見ると、資料を作り終えたのかホッチキスで丁寧に製本され、山積みになった資料の横で肘をつき、ただただ困惑している様子をうっとりし、蕩けるたような表情で見つめていた。

「どうしてって顔しとるなぁ…、その顔もたまらんわ、可愛らしい。」

「と、トントンどうしたん、大丈夫？変なの食べた？」

「お前の中の俺どないなっとんの？」

不満げにジト目で睨まれるが、すぐ破顔して、

「好きなだけ、Aのことが大好きなだけよ。」

「恥ずかしいとか照れるとかそういう感情どっかに落としたの…、」

「わ、顔赤くなった…可愛い、」

「やめてクレメンス…！！」

幸せそうに、ふふ、ゆでダコみたいやなぁ、と顔をほころばせる貴方に、私はいとも簡単に一喜一憂させられる。

少し悔しい気もするけど、これはこれで。

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