012/信用できるか否か ページ12
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残された二人は、松陽が戻ってくるまで手持ち無沙汰になってしまった。
ごろりとAは寝転ぶ。
畳のにおいが鼻をつく。このにおいも、Aにとっては懐かしいものだ。
夕食を食べ終わると、よくこうして畳の上に寝転んだものだ。
「……A」
銀時は身を縮めたまま、Aの名を呼ぶ。
「なぁに?」
仰向けで大の字になりながら、Aは声を出した。
銀時は足を三角に立て、膝の間に顔を埋めた。
「これから、どうする」
「どうするって……ここにいるんじゃないの?」
「松陽って奴は、信用できんのか?」
Aはがばりと身を起こした。
部屋の中をゆったりと見渡し、松陽がいなくなっていった襖を見つめる。
考えながら、Aは言葉を紡いだ。
「信用できる、できないっていうより……信用しなきゃ」
銀時はAの言った意味を理解しづらそうに顔をしかめた。
「ほら、わたしたち食べるものも住む家もないでしょう? 今は死んだ人から食べ物を漁ったり、畑から野菜を盗んだりして生きていけるかもしれない。でも、その先は?」
常に死人が食料を持っているとは限らない。
畑も凶作の年だってあるだろう。
食べ物がない日が何日も、下手すれば何年も続く可能性だってある。
「大きくなっても、わたしたちはそうやって暮らすの? 働きたくても文字も読めない人を雇うわけがない」
視線を襖から銀時へ向ける。
難しそうな顔をする銀時に、Aは微笑んだ。
「わたしたちがこれからも生きていくためにはあの人を信用するしかないの。勉強を教えてもらって、大人になっても生きていけるためには、あの人を信用しなきゃ」
本当に信用できるか否かは、そのあと考えればいい。
「大丈夫! もしあの人が裏切っても、銀時だけは守ってみせるから!」
それでも納得していない銀時にそう言えば、彼はムッとしたように唇を尖らせた。
「なんでおれがおまえに守られるんだよ」
「えっ! だって銀時、わたしより背もちいさいし……」
「これからでっかくなる!」
「えぇ! ほんと? ふふ、大きくなった銀時が早く見てみたいなぁ!」
「ぜったいでっかくなって、Aくらいなら簡単に抱えてやる!」
むんっ! と力こぶを作って見せる銀時に、Aはころころと笑った。
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弥生 - そして先生と夢主って…!と思います^_^; (2021年11月2日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 銀さんとのやりとりかわいい…! (2021年10月28日 12時) (レス) @page12 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 自分のペースで良いですよ!(*^^*)夢主の成長が楽しみです!(*^◯^*) (2021年10月17日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
ふじ(プロフ) - 弥生さん» 弥生さん、コメントありがとうございます!最近更新ができていなくてすみません🙇♂️これからぼちぼち更新していこうと思っています!どうぞよろしくお願いします🥳 (2021年10月10日 12時) (レス) @page10 id: 9f078bb16b (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 夢主と銀さんの絡み方が可愛いですっ╰(*´︶`*)╯夢主の父親はどんな人かとか気になりますっ!続き楽しみです!(*^^*) (2021年10月6日 9時) (レス) @page10 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふじ | 作成日時:2021年9月20日 0時