渋谷事変 第四夜 七海建人 ページ8
体が、重い。
静まり返った駅を、七海建人は歩いていた。
その上半身はおびただしい火傷で覆われている。
左目はなく、今歩いているのも奇跡のようなものだ。
一つ、一つ階段をおりる。
その先には無数の改造人間がいた。
それらすべてが七海の命を喰らおうと口を開けている。
「マレーシア……」
ふと思いついたようにこぼされた声は小さい。
「そうだな、マレーシア……クアンタンがいい」
なんでもない海辺に家を建てよう。
買うだけ買って手をつけていない本が山ほどある。
一ページずつ、今までの時間を取り戻すようにめくるんだ。
彼女の隣で。
「違う」
私は今伏黒くんを助けに……
真希さん……直毘人さんは？
二人は、どうなった……？
「……疲れたな」
そう。疲れたんだ。
もう充分やったさ。
それなのに
鉈を握る手は緩められることはない。
その体が呪霊の前に差し出されることはない。
気づくと七海は、さっきまでいた改造人間を殺し、血溜まりの真ん中に突っ立っていた。
トッ、と軽い感触と共にだれかの手が胸に当てられた。
白い肌に、縫い目。
この手の持ち主を、七海は知っている。
「……いたんですか」
「いたよ。ずっとね」
彼女との共同任務で遭遇した呪霊。真人。
彼は穏やかに微笑んでいた。
「ちょっとお話するかい？ 君には何度か付き合ってもらったし」
七海は残った右目で瞬きをした。
自分はここで死ぬ。死ぬ。死んでしまう。
(……灰原)
かつての友のところへようやく行ける。
(私は結局なにがしたかったんだろうな)
逃げて、逃げたくせに、やり甲斐なんて曖昧な理由で戻ってきて。
視界の端に桜が舞った。
春なんてとっくに過ぎて、もうすぐ冬がくるというのに、その桜は美しく舞った。
七海はそれの持ち主を知っていた。
示すように、友は横を指さす。
真人と七海の目がそちらへ向いた。
「ナナミン！」
視界がぼやけて、よく見えない。
あぁ、でも、柔らかな、華やかな桜色はハッキリと見えた。
(……ダメだ、灰原)
口からこぼれる言葉を押しとどめる。
それは言ってはいけない。
それは、彼女にとって呪いになる。
「虎杖さん」
わかっているのに
「後は、頼みます」
そして、もう一つ。
驚愕に満ちている瞳に囁いた。
「愛しています」
愛は、なによりも強力な呪いとなる。
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ただのバカです - くっそ良かったです。…涙止まらん。完結おめでとうございます！ (2022年10月30日 1時) (
レス) @page31 id: 37480b1f74 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - K太さん» K太さん、コメントありがとうございます！年内に完結を目指していたのでそれを達成できて嬉しいです！ここまでお付き合いいただきありがとうございました！ (2022年1月1日 7時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ(七海建人の嫁) - ↓の続き 芥見先生に言って建人は正式に承認された私の夫 (2022年1月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
マリイ(七海建人の嫁) - 建人は私の夫建人の方からプロポーズして来た建人は私が居ないと私に愛されてないと建人死んじゃう建人は私には超過保護 私はHSPで建人は恩人でもある結婚指輪も付けてる (2022年1月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
K太(プロフ) - 年内最後にこの作品を完結まで見れたことが嬉しいです。更新ありがとうございます。そしてお疲れ様です。 (2021年12月31日 21時) (レス) @page31 id: a6028f1a22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柊 | 作成日時：2021年12月4日 21時
