幼魚と逆罰 ページ8
「見えますか? これが呪力の残穢です」
――神奈川県川崎市
キネマシネマ
Aと七海は屋上へ続く廊下の真ん中で立ち止まっていた。
無事コンビニで買うことのできたAの右手には濡れたビニール傘が。
もう片方の手で額に触れ、ぐぐっと目をこらす。
「いや、全然見えない」
術式を使えば痕跡が残る。
呪術師たちはそれを残穢と呼んでいるらしい。
そして、今二人の前にも残穢の足跡があるのだが、Aにはさっぱり見えない。
「私たちは普段、当たり前のように呪いを視認しています。だが残穢は呪霊などに比べ薄い。目をこらしてよく見てください」
Aの、いつもは大きくきょろきょろと動く瞳も、今はくっつきそうなくらい細められていた。
「んんん……??」
しかめすぎて眉毛がぶつかりそうになったとき、ようやくAはパッと目を開いた。
廊下にたしかに足跡のようなものが続いているのが見えたのだ。
「見える見える!!」
「当然です。見る前に気配で悟って一人前ですから」「もっとこう、褒めて伸ばすとかさぁ……」
Aにも見えるようになった残穢を追いかけ、二人は歩き出す。
「褒めも貶しもしませんよ。事実に即し、己を律する。それが私です」
たしかに。
Aは七海の後ろ姿を見ながら思った。
理性、規律が服を着て歩いているような七海らしい言葉だ。
だが……やっぱり褒めてほしいなぁ。
「社会も同様であると勘違いしていた時期もありましたが……その話はいいでしょう。追いますよ」
「うす! 気張ってこー!」
「いえ。そこそこで済むならそこそこで」
手のひらに拳を打ち込んで気合を入れたAとは対象的に淡々とする七海。
ずっこけそうになるのをこらえて、Aは無言を貫くことにした。
なんだか噛み合わない。
打てど響かず、か。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時