幼魚と逆罰 ｰ死ｰ ページ32
ぐにぃ、と目の前で順平の顔が歪んだ。
奇妙な物体と成り果てた順平は、妙に出っ張った目でAを見上げた。
「さぁ、Round2だ」
真人の声と共にAを壁に縫いつけていた手が引く。Aは静かに地面に着地した。
「じゅ、んぺい……」
今起こったことを処理しようと頭が動く。
だが、おおよそそれは簡単に処理できるようなことではなかった。頭の片隅から白が侵食していく。
次の瞬間、Aの顔面に順平の拳がぶち当たった。
「順平！！」
口の中が切れる。
ツ、と唇の端から血が垂れた。
それでもAは、もう一発、と拳を振り上げる順平を脇の下で掴まえる。
「しっかりしろ！ 今治してやるから！！」
Aの声など聞こえないのか、順平の攻撃は止まらない。
何度も何度も腹に打ち込まれる拳にAは息を詰まらせた。
「宿儺ッ――！ 宿儺ァ！！」
「なんだ？」
ぐぱっ、とAの目の下に口が現れる。
その声は今にも笑いだしそうなのを我慢しているような、声音。
「なんでもする！ あたしのことは好きにしていい！ だから、だから、あたしの心臓を治したときみたいに――順平を治してあげて！！」
ケヒッ
ケヒヒッ
「断る」
それは笑いながら言った。
さも愉快そうに笑いながら。
「な、んで！！」
「愉快愉快」
口の上に現れた赤い目が、にんまりと弧を描く。
笑いは止まらなかった。
心底愉快だ。愉快で仕方ない。
「矜恃も未来も！ オマエのすべてを捧げて俺に寄り縋ろうと！！ なにも救えないとは！！」
ドッ、ドッ、ドッ、と心臓が痛いくらいに脈打つ。
Aは汗が一筋、額から落ちるのを感じた。
「惨めだなぁ！ この上なく惨めだぞ！！ 小娘！！」
真人はふつふつと腹の底から湧く笑いを吐き出した。
Aの顔がみるみる絶望に染まっていくのが、見ていておもしろい。
「ふはははははっ、ははははははは！！！」
笑う。彼らは笑う。
そのとき、不意にAはわかってしまった。
頭の中をガンガンと殴ってくる笑い声を聞きながら。
――あぁ、そうか。
理解してしまった。
――こいつらは、どこまでいっても呪いなんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 709人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます！私もこの2人が大好きなんです〜！応援ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年1月13日 23時) (
レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください！！！ (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柊 | 作成日時：2021年1月6日 0時
