大切な人の価値 ページ23
――学校？ 行かなくていいんじゃない？
その言葉に救われた。
――あんたぐらいの年頃はなんでも重く考えすぎるからね。
心がスっと軽くなった。
――学校なんて小さな水槽に過ぎないんだよ。海だって、ほかの水槽だってある。
笑う母の顔が大好きだ。
――好きに選びな。
「……虎杖さんのお母さんはどんな人？」
不意にこぼされた問いにAはしばらく考える。
「あたし、会ったことないんだ。お父さんはうーっすら記憶あんだけどね。私には、じいちゃんがいたから」
本人には絶対に言わなかったけれど、幸せだった。
大切なたった一人の家族だった。
不器用だったけれど、それでも人並みの愛情はたくさん与えてもらった。
そのとき、Aのポケットの中でスマホが震えた。
「あ、ごめん電話」
なにやら話しているAの横顔を見つめていると、ある疑問が口をついて転がりでた。
「虎杖さんは呪術師なんだよね？」
「うん」
電話を終えたAは順平を見た。
「人を、殺したことはある？」
「………………ない」
たくさんの間を取って出てきた答えは否定の二文字。間違いではない。間違いではないのに、なにかが心に引っかかった。
「でも、いつか悪い呪術師と戦ったりするよね。そのときはどうするの？」
「……それでも、殺したくはないな」
「なんで？ 悪いやつだよ？」
「なんつーか……」
Aは自分の右手を見下ろした。
「一度人を殺したら、殺すって選択肢が私の中に入り込むと思うの。命の価値が曖昧になって、大切な人の価値までわからなくなるのが、あたしは……怖い」
そう吐き出した薄桃色の唇は、かすかに震えていた。
.
人に心なんてない。
その考えに、また救われた。
力を与えてもらった。
でも、僕が人を殺すことであの魂が穢れてしまうなら。
脳裏によぎる暖かな母の笑顔。
僕に人は、殺せない。
もう、やめよう。
人を、殺したいと願うのは。
順平は瞼にひらめく桜色を見つめながら、静かに目を閉じた。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます！私もこの2人が大好きなんです〜！応援ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年1月13日 23時) (
レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください！！！ (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柊 | 作成日時：2021年1月6日 0時
