他人のために本気で怒る ページ13
[いや、元人間と言った方がいいかな]
Aは下唇を噛み締める。
やはり七海の予感は当たっていた。
[映画館の三人と同じだな。呪術で体の形を無理やり変えられてる]
「それだけなら初めに気づけますよ」
七海はサングラスをかけ直し、家入の言葉に返す。
「私たちが戦った二人には呪霊のように呪力が漂っていた」
[そればっかりは犯人に術式のことを聞くしかないな]
困惑のため息が家入の口からこぼれた。
Aは身の内にふつふつと湧いてくる怒りを押し殺すように拳を握りしめる。
[ただ脳幹の辺りにイジられた形跡がある。恐らく意識障害……錯乱状態を作り出すためだろう]
人の体をいじる。
その事実にAは腹の底がふるりと震えるのを感じた。押し寄せていた怒りが腹の中心で奇妙な揺れ方をする。
[脳までイジれるなら呪力が使えるように人間を改造することも可能かもしれん。脳と呪力の関係はまだまだブラックボックスだからな]
そうだ、と家入は言葉を続けた。
[虎杖は聞いてるか?]
「あ、はい」
[コイツらの死因はざっくり言うと、体を改造させられたことによるショック死だ]
優しい声だった。
人を、人だったものを殺してしまったAを気遣う声だった。
[君が殺したんじゃない。その辺り、履き違えるなよ]
「……はい」
家入はそう言ってくれる。事実、Aが殺したわけではない。
だが、それでも。Aにとってはあの呪霊はAが殺したも同然だった。
七海は画面をタップして通話を終了する。
「どっちもさ」
ぽつりとAから声がもれた。
「あたしにとっては同じ重さの他人の死なの。それでも、それでもこれは」
犯人への殺意が噴き出した。
「趣味が悪すぎだろ」
「…………」
彼女は人のために本気で怒れる。怒ることができる。
呪術師にしてしまうにはもったいないほどに真っ直ぐで、優しすぎる。
「あの残穢自体ブラフで私たちは誘い込まれたのでしょう。相当なやり手です」
ぎしっ、とソファーが軋み、七海は立ち上がった。
「これはそこそこでは済みそうにない」
サングラス越しの切れ長の瞳と目が合った。
「気張って行きましょう」
ぐっ、と顎を引いたAは深く頷いた。
「おう!」
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時